障害福祉サービス市場概況分析（2023年3月版）

概要

本分析は、2023年3月時点のWAM（独立行政法人福祉医療機構）データに基づき、日本全国の障害福祉サービス市場の全体像を詳細に分析したものです。2022年9月データとの比較分析により、市場の成長動向と構造変化を明らかにします。

市場規模の概況

全体統計

2023年3月時点

• 総施設数: 159,780施設（前回比+3,808施設、+2.4%成長）
• 総定員数: 1,086,380名（前回比+18,997名、+1.8%成長）
• サービス種別: 29種類（変更なし）
• 対象地域: 全国47都道府県

成長トレンド分析

6ヶ月間（2022年9月→2023年3月）での成長実績：

• 月平均成長率: 0.4%
• 年間成長率: 約4.8%（推定）
• 新規施設開設: 月平均635施設

この成長率は、前半期（2022年3月→2022年9月）の月平均0.7%から減速しており、市場成長がやや鈍化傾向にあることを示しています。ただし、児童系サービスを中心とした特定分野では依然として高い成長率を維持しています。

サービス構成分析

主要サービス別構成比（2023年3月）

1. 居宅介護: 20,972施設（13.1%）【前回比+475施設】
2. 重度訪問介護: 18,248施設（11.4%）【前回比+349施設】
3. 放課後等デイサービス: 17,004施設（10.6%）【前回比+588施設】
4. 就労継続支援B型: 14,653施設（9.2%）【前回比+385施設】
5. 生活介護: 11,083施設（6.9%）【前回比+140施設】

サービスカテゴリー別分析

訪問系サービス

• 施設数: 50,908施設（31.9%）
• 成長率: +2.2%（+1,078施設）
• 特徴: 在宅支援ニーズの継続的な需要により安定成長を維持

通所・日中活動系サービス

• 施設数: 69,143施設（42.7%）
• 成長率: +2.7%（+1,799施設）
• 総定員: 940,640名
• 特徴: 児童発達支援や放課後等デイサービスなど児童系サービスを中心に高い成長率を維持

居住・入所系サービス

• 施設数: 14,835施設（9.3%）
• 成長率: +2.5%（+376施設）
• 総定員: 145,740名
• 特徴: 地域生活移行の流れが継続、共同生活援助を中心に緩やかな成長

相談・支援系サービス

• 施設数: 24,894施設（15.6%）
• 成長率: +2.3%（+555施設）
• 特徴: 相談支援専門員の役割拡大により着実な成長を継続

法人格別事業者分析

事業者構成（2023年3月）

1. 株式会社: 51,638施設（32.3%）

   • 平均定員: 4.2名
   • 特徴: 小規模施設、訪問系・児童系サービスが得意分野

2. 社会福祉法人: 50,647施設（31.7%）

   • 平均定員: 10.9名
   • 特徴: 大規模施設運営、従来型サービスが中心

3. その他法人: 39,036施設（24.4%）

   • 平均定員: 5.3名
   • 医療法人、自治体、協同組合等を含む

4. NPO法人: 18,459施設（11.6%）

   • 平均定員: 5.9名
   • 特徴: 地域密着型サービス、コミュニティベース

事業者構成の変化

前期（2022年9月）と比較すると、株式会社の市場シェアが31.6%から32.3%へとさらに拡大。特に児童系サービスと就労支援分野での新規参入が継続しており、民間事業者による市場牽引が顕著です。

地域分布分析

都道府県別施設数（上位5位）

1. 大阪府: 20,634施設（12.9%）【前回比+1,535施設】
2. 東京都: 10,936施設（6.8%）【前回比+60施設】
3. 愛知県: 10,005施設（6.3%）【前回比+209施設】
4. 北海道: 9,138施設（5.7%）【前回比+39施設】
5. 神奈川県: 8,265施設（5.2%）【前回比+179施設】

地域特性分析

大都市圏（三大都市圏）

• 施設数: 61,782施設（38.7%）
• 成長率: +3.7%（+2,217施設）
• 特徴: 人口集中への対応が継続、大阪府の成長が突出

地方圏

• 施設数: 97,998施設（61.3%）
• 成長率: +1.6%（+1,591施設）
• 特徴: 成長率鈍化、地域格差拡大の傾向

注目ポイント: 大阪府の+8.0%成長が全国平均を大幅に上回り、関西圏での事業集中が加速。

高成長サービス分析

成長率上位サービス（2022年9月→2023年3月）

1. 居宅訪問型児童発達支援: +6.3%（+13施設）
2. 保育所等訪問支援: +5.5%（+105施設）
3. 児童発達支援: +5.1%（+508施設）
4. 自立訓練(機能訓練): +3.7%（+8施設）
5. 放課後等デイサービス: +3.6%（+588施設）

児童系サービスの持続的成長

児童発達支援と放課後等デイサービスを合わせた児童系施設は27,515施設となり、全体の17.2%を占める最大カテゴリーに拡大。早期療育と放課後支援への社会的ニーズの高まりが持続的な成長を支えています。

市場成熟度評価

成熟サービス（安定成長期）

• 居宅介護（+2.3%）、重度訪問介護（+1.9%）、生活介護（+1.3%）
• 成長率: 1-3%台の安定成長
• 市場シェア: 高位安定

成長サービス（拡大期）

• 児童発達支援（+5.1%）
• 放課後等デイサービス（+3.6%）
• 共同生活援助（+3.3%）

新興サービス（導入期）

• 居宅訪問型児童発達支援（+6.3%）
• 就労継続支援A型（+3.1%）
• 就労定着支援（+2.8%）

今後の市場展望

成長要因

1. 児童系サービス需要継続: 発達障害児支援への社会的関心の高まり
2. 地域格差是正: 大都市圏での更なるサービス集積
3. 専門性向上: 重度対応・医療的ケア対応への質的向上
4. 就労支援拡充: 障害者雇用促進に向けた制度整備の継続

市場機会

1. 児童系専門事業: 療育・教育分野での専門性による差別化
2. 大阪圏での事業展開: 関西経済圏での高成長機会
3. 質的向上サービス: 既存市場での高付加価値サービス
4. 地方部効率化: ICT活用による効率的サービス提供モデル

本分析は2023年3月時点のデータに基づき、2022年9月データとの比較により市場動向を分析しています。数値は WAM公開データを基に算出しており、一部推計を含みます。