障害福祉サービス市場概況分析（2022年9月版）
概要
本分析は、2022年9月時点のWAM（独立行政法人福祉医療機構）データに基づき、日本全国の障害福祉サービス市場の全体像を詳細に分析したものです。2022年3月データとの比較分析により、市場の成長動向と構造変化を明らかにします。
市場規模の概況
全体統計
2022年9月時点
- 総施設数: 155,972施設（前回比+6,432施設、+4.3%成長）
- 総定員数: 1,067,383名（前回比+44,189名、+4.3%成長）
- サービス種別: 29種類（変更なし）
- 対象地域: 全国47都道府県
成長トレンド分析
6ヶ月間（2022年3月→2022年9月）での成長実績：
- 月平均成長率: 0.7%
- 年間成長率: 約8.6%（推定）
- 新規施設開設: 月平均1,072施設
この成長率は、前半期（2021年11月→2022年3月）の月平均0.6%を上回り、障害福祉サービス市場の成長が加速している状況を示しています。
サービス構成分析
主要サービス別構成比（2022年9月）
- 居宅介護: 20,497施設（13.1%）【前回比+578施設】
- 重度訪問介護: 17,899施設（11.5%）【前回比+432施設】
- 放課後等デイサービス: 16,416施設（10.5%）【前回比+1,187施設】
- 就労継続支援B型: 14,268施設（9.1%）【前回比+681施設】
- 生活介護: 10,943施設（7.0%）【前回比+389施設】
サービスカテゴリー別分析
訪問系サービス
- 施設数: 47,929施設（30.7%）
- 成長率: +2.9%（+1,348施設）
- 特徴: 在宅支援ニーズの継続的な拡大により安定成長
通所・日中活動系サービス
- 施設数: 60,452施設（38.8%）
- 成長率: +5.9%（+3,389施設）
- 総定員: 570,306名
- 特徴: 児童向けサービスを中心に高成長率を記録
居住・入所系サービス
- 施設数: 14,125施設（9.1%）
- 成長率: +4.3%（+615施設）
- 総定員: 145,102名
- 特徴: 安定したニーズに支えられ着実な成長
相談・支援系サービス
- 施設数: 33,466施設（21.4%）
- 成長率: +3.3%（+1,080施設）
- 特徴: サービス利用者増加に伴い、相談支援体制が拡充
法人格別事業者分析
事業者構成（2022年9月）
-
社会福祉法人: 50,462施設（32.4%）
- 平均定員: 10.9名
- 特徴: 大規模施設運営、従来型サービスが中心
-
株式会社: 49,258施設（31.6%）
- 平均定員: 4.2名
- 特徴: 小規模施設、訪問系・児童系サービスが得意分野
-
その他法人: 37,951施設（24.3%）
- 平均定員: 5.3名
- 医療法人、自治体、協同組合等を含む
-
NPO法人: 18,301施設（11.7%）
- 平均定員: 5.9名
- 特徴: 地域密着型サービス、コミュニティベース
事業者構成の変化
前期（2022年3月）と比較すると、株式会社の市場シェアが30.5%から31.6%へと拡大。特に児童系サービスと就労支援分野での新規参入が顕著です。
地域分布分析
都道府県別施設数（上位10位）
- 大阪府: 19,099施設（12.2%）【前回比+870施設】
- 東京都: 10,876施設（7.0%）【前回比+326施設】
- 愛知県: 9,796施設（6.3%）【前回比+436施設】
- 北海道: 9,099施設（5.8%）【前回比+348施設】
- 神奈川県: 8,086施設（5.2%）【前回比+464施設】
地域特性分析
大都市圏（三大都市圏）
- 施設数: 59,565施設（38.2%）
- 成長率: +4.8%（+2,736施設）
- 特徴: 人口集中に対応、児童系サービスの急成長
地方圏
- 施設数: 96,407施設（61.8%）
- 成長率: +4.0%（+3,696施設）
- 特徴: 人口当たりサービス密度の維持、地域密着型サービス
注目ポイント: 大阪府の+4.8%成長が最も高く、関西圏での事業拡大が活発。
高成長サービス分析
成長率上位サービス（2022年3月→9月）
- 居宅訪問型児童発達支援: +14.4%（+26施設）
- 保育所等訪問支援: +13.7%（+229施設）
- 重度障害者等包括支援: +11.8%（+2施設）
- 児童発達支援: +9.8%（+894施設）
- 就労定着支援: +8.5%（+108施設）
児童系サービスの急成長
児童発達支援と放課後等デイサービスを合わせた児童系施設は26,419施設となり、全体の16.9%を占める巨大市場に拡大。早期療育と放課後支援への社会的ニーズの高まりが成長を牽引しています。
市場成熟度評価
成熟サービス（安定成長期）
- 居宅介護（+2.9%）、重度訪問介護（+2.5%）、生活介護（+3.7%）
- 成長率: 2-4%台の安定成長
- 市場シェア: 高位安定
成長サービス（拡大期）
- 児童発達支援（+9.8%）
- 放課後等デイサービス（+7.8%）
- 共同生活援助（+5.7%）
新興サービス（導入期）
- 就労定着支援（+8.5%）
- 自立生活援助（+5.4%）
- 居宅訪問型児童発達支援（+14.4%）
今後の市場展望
成長要因
- 児童系サービス需要拡大: 発達障害児への支援ニーズ増加
- 就労支援制度充実: 障害者雇用促進に向けた制度整備
- 地域格差是正: 地方部でのサービス基盤整備継続
- 重度対応強化: 医療的ケア児等への専門支援拡充
市場機会
- 児童系専門事業: 療育・教育分野の専門性が競争優位に
- 就労支援連携: 企業との連携による定着支援強化
- 地方展開: 人口減少地域での効率的サービス提供モデル
- 医療連携: 医療・福祉連携による重度者支援
本分析は2022年9月時点のデータに基づき、2022年3月データとの比較により市場動向を分析しています。数値は WAM公開データを基に算出しており、一部推計を含みます。