サービス動向分析（2023年3月版）
概要
本分析は、2023年3月時点の障害福祉サービス事業所データから、29種類のサービス別動向を詳細に分析したものです。前回（2022年9月版）との比較により、各サービスの成長性、市場成熟度、今後の展望を事業者の視点から検証します。
サービス別成長率ランキング
高成長サービス（成長率5%以上）
| 順位 | サービス名 | 成長率 | 施設数増減 | 2023年3月施設数 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 居宅訪問型児童発達支援 | +6.3% | +13施設 | 220施設 |
| 2 | 保育所等訪問支援 | +5.5% | +105施設 | 2,007施設 |
| 3 | 児童発達支援 | +5.1% | +508施設 | 10,511施設 |
安定成長サービス（成長率2-5%）
| サービス名 | 成長率 | 施設数増減 | 2023年3月施設数 |
|---|---|---|---|
| 自立訓練(機能訓練) | +3.7% | +8施設 | 227施設 |
| 放課後等デイサービス | +3.6% | +588施設 | 17,004施設 |
| 共同生活援助 | +3.3% | +358施設 | 11,332施設 |
| 就労継続支援A型 | +3.1% | +123施設 | 4,062施設 |
| 就労定着支援 | +2.8% | +38施設 | 1,419施設 |
| 行動援護 | +2.7% | +61施設 | 2,360施設 |
| 居宅介護 | +2.3% | +475施設 | 20,972施設 |
| 短期入所 | +2.3% | +150施設 | 6,650施設 |
| 障害児相談支援 | +2.3% | +161施設 | 7,043施設 |
サービスカテゴリー別分析
児童系サービス（最成長分野）
児童発達支援
- 施設数: 10,511施設（+508施設、+5.1%）
- 平均定員: 9.3名
- 市場特性: 早期療育ニーズの高まりで継続的な高成長
- 事業機会: 専門性による差別化が重要、質的競争の時代
放課後等デイサービス
- 施設数: 17,004施設（+588施設、+3.6%）
- 平均定員: 8.6名
- 市場特性: 最大規模のサービス、成長率はやや鈍化
- 事業機会: 差別化・専門性確立による競争優位
保育所等訪問支援
- 施設数: 2,007施設（+105施設、+5.5%）
- 市場特性: インクルーシブ教育推進で高成長継続
- 事業機会: 教育機関との連携強化が成功の鍵
居宅訪問型児童発達支援
- 施設数: 220施設（+13施設、+6.3%）
- 市場特性: 最小規模だが最高成長率の新興サービス
- 事業機会: 専門人材確保が参入の必要条件
訪問系サービス
居宅介護
- 施設数: 20,972施設（+475施設、+2.3%）
- 市場特性: 最大施設数、安定的な需要で継続成長
- 事業機会: 地域密着・専門性による差別化
重度訪問介護
- 施設数: 18,248施設（+349施設、+1.9%）
- 市場特性: 大規模市場での安定成長
- 事業機会: 重度対応の専門性と24時間対応体制
同行援護
- 施設数: 7,083施設（+76施設、+1.1%）
- 市場特性: 視覚障害特化サービス、成長鈍化
- 事業機会: 専門ガイドヘルパー確保による差別化
通所・日中活動系サービス
生活介護
- 施設数: 11,083施設（+140施設、+1.3%）
- 平均定員: 25.0名
- 市場特性: 大規模・安定市場、成長鈍化
- 事業機会: 医療的ケア対応で差別化、専門性重視
就労継続支援B型
- 施設数: 14,653施設（+385施設、+2.7%）
- 平均定員: 16.9名
- 市場特性: 大規模市場での安定成長
- 事業機会: 工賃向上・企業連携が差別化要因
就労継続支援A型
- 施設数: 4,062施設（+123施設、+3.1%）
- 平均定員: 15.1名
- 市場特性: 成長率上昇、雇用型サービスへの注目
- 事業機会: 労働法規遵守と安定経営の両立
就労移行支援
- 施設数: 3,275施設（+7施設、+0.2%）
- 平均定員: 10.8名
- 市場特性: 成長鈍化、成果主義による選別強化
- 事業機会: 就職実績・定着率による評価が重要
居住・入所系サービス
共同生活援助
- 施設数: 11,332施設（+358施設、+3.3%）
- 市場特性: 地域移行推進で持続成長
- 事業機会: 既存住宅・マンション活用、専門ホーム差別化
施設入所支援
- 施設数: 2,508施設（+9施設、+0.4%）
- 平均定員: 48.1名
- 市場特性: 最低成長、地域移行方針による新規抑制
- 事業機会: 重度・高齢化対応で専門性向上
福祉型・医療型障害児入所施設
- 施設数: 433施設（+2施設、+0.5%）
- 市場特性: 専門性高く参入障壁高い市場
- 事業機会: 医療・福祉複合型専門サービス
相談・支援系サービス
計画相談支援
- 施設数: 11,259施設（+184施設、+1.7%）
- 市場特性: 制度基盤として安定成長
- 事業機会: 質の高いモニタリングで利用者信頼獲得
障害児相談支援
- 施設数: 7,043施設（+161施設、+2.3%）
- 市場特性: 児童系サービス拡大に連動した成長
- 事業機会: 発達支援の専門性が差別化要因
地域移行支援・地域定着支援
- 施設数: 6,399施設（+60施設、+0.9%）
- 市場特性: 地域生活移行政策連動の安定市場
- 事業機会: 入所施設・精神科病院との連携強化
市場成熟度別サービス分析
成熟サービス（安定期）
特徴: 成長率1-3%、大規模市場、競争激化
- 居宅介護、重度訪問介護、生活介護、計画相談支援
事業戦略:
- 質的向上による差別化
- 運営効率化によるコスト競争力
- 専門性確立による付加価値創出
成長サービス（拡大期）
特徴: 成長率3-6%、市場拡大継続、参入機会
- 児童発達支援、放課後等デイサービス、共同生活援助
事業戦略:
- 成長市場でのシェア確保
- 専門性による差別化
- スケールメリット追求
新興サービス（導入期）
特徴: 成長率5%以上、小規模市場、高い専門性要求
- 居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援
事業戦略:
- 早期参入によるポジション確立
- 専門人材の確保・育成
- 制度理解と実践ノウハウ蓄積
サービス選択の戦略的示唆
新規参入推奨サービス
- 児童発達支援: 継続的な成長市場、専門性による差別化可能
- 保育所等訪問支援: 高成長率、教育機関連携による安定性
- 共同生活援助: 地域生活移行の政策推進で長期的な成長期待
慎重検討サービス
- 就労移行支援: 成長率鈍化、成果主義による選別強化
- 同行援護: 成長率低下、専門性要求高
- 医療型サービス: 高い専門性と設備投資が必要
安定運営サービス
- 居宅介護: 最大市場、安定需要、参入しやすい
- 計画相談支援: 制度必須サービス、安定した収益
- 短期入所: レスパイトニーズで継続的な需要
複合展開の効果的パターン
児童系複合
- 児童発達支援 + 放課後等デイサービス + 障害児相談支援
- 効果: 年齢継続支援、相談支援による利用者確保
就労系複合
- 就労移行支援 + 就労継続支援B型 + 就労定着支援
- 効果: 一貫した就労支援、成果向上によるブランド確立
地域生活支援複合
- 共同生活援助 + 短期入所 + 計画相談支援
- 効果: 地域生活トータルサポート、利用者囲い込み
本分析は2023年3月時点のデータに基づき、各サービスの成長動向と事業機会を分析しています。サービス選択時は地域特性と競合状況も合わせてご検討ください。