障害者福祉サービス市場概況分析（2021年11月版）
概要
2021年11月時点における障害者福祉サービス市場の全体像を、全国の事業所データに基づいて分析します。本レポートは、事業者の皆様の戦略的意思決定に資する情報を提供することを目的としています。
市場規模と構成
全体の事業所数
2021年11月時点で、全国の障害者福祉サービス事業所は145,937事業所に達しています。
サービス種別構成比
主要なサービス種別の構成比は以下の通りです：
1. 訪問系サービス（32.6%）
- 居宅介護：19,535事業所（13.4%）
- 重度訪問介護：17,132事業所（11.7%）
- 同行援護：6,880事業所（4.7%）
- 行動援護：2,199事業所（1.5%）
- 居宅訪問型児童発達支援：164事業所（0.1%）
- 保育所等訪問支援：1,582事業所（1.1%）
2. 通所・日中活動系サービス（42.3%）
- 放課後等デイサービス：14,663事業所（10.0%）
- 就労継続支援B型：13,245事業所（9.1%）
- 生活介護：10,407事業所（7.1%）
- 児童発達支援：8,680事業所（5.9%）
- 就労継続支援A型：3,682事業所（2.5%）
- 就労移行支援：3,188事業所（2.2%）
- 短期入所：6,094事業所（4.2%）
- その他：3,092事業所（2.0%）
3. 居住・入所系サービス（9.2%）
- 共同生活援助(グループホーム)：10,012事業所（6.9%）
- 施設入所支援：2,484事業所（1.7%）
- 福祉型障害児入所施設：235事業所（0.2%）
- 医療型障害児入所施設：193事業所（0.1%）
- その他：301事業所（0.2%）
4. 相談・支援系サービス（15.9%）
- 計画相談支援：9,344事業所（6.4%）
- 障害児相談支援：6,462事業所（4.4%）
- 地域相談支援（地域移行）：3,144事業所（2.2%）
- 地域相談支援（地域定着）：3,020事業所（2.1%）
- 就労定着支援：1,234事業所（0.8%）
法人形態別分析
法人種別構成
- 社会福祉法人：34.0%（49,551事業所）
- 株式会社：30.0%（43,777事業所）
- NPO法人：12.0%（17,527事業所）
- その他：24.0%（35,082事業所）（医療法人、個人等を含む）
法人形態別特徴
社会福祉法人
- 入所施設や大規模通所施設を中心に展開
- 平均定員数は10.9人と大規模事業所中心
- 地域密着型の運営が特徴
株式会社
- 居宅系サービス及び児童系サービスでの参入が多い
- 平均定員数は4.1人と小規模事業所中心
- 事業拡大スピードが速い傾向
NPO法人
- 地域課題解決型のサービス展開
- 平均定員数は5.8人と小規模事業所が多い
- 利用者のニーズに応じた柔軟なサービス提供
地域別分布特性
都道府県別事業所密度
上位5都道府県
- 大阪府：17,258事業所（11.8%）
- 東京都：10,387事業所（7.1%）
- 愛知県：9,140事業所（6.3%）
- 北海道：8,533事業所（5.8%）
- 神奈川県：7,472事業所（5.1%）
地方格差の現状
- 首都圏・関西圏：全体の37.7%（55,049事業所）が集中
- 地方部：全体の62.3%（90,888事業所）に分散
- 地方の特徴：人口当たりのサービス密度が高い傾向
定員規模分析
平均定員数
- 総定員数：1,006,468人
- 訪問系サービス：定員制限なし（在宅支援）
- 施設系サービス：1,006,468人の総定員
- 平均利用定員：約13.4人/事業所
定員規模別分布（定員のあるサービスのみ）
小規模事業所（1-10人）：52.5%（28,287事業所）
- 平均定員：8.5人
- 柔軟なサービス提供が可能
- 地域密着型運営
中規模事業所（11-30人）：31.3%（16,878事業所）
- 平均定員：19.2人
- 効率的な運営が可能
- 標準的な経営モデル
大規模事業所（30人以上）：16.1%（8,679事業所）
- 平均定員：50.9人
- 高い収益性
- 専門性の高いサービス提供
新規参入・撤退の動向
新規参入の特徴
- 主要参入サービス：居宅介護、放課後等デイサービス、就労継続支援B型
- 参入事業者の特徴：株式会社による小規模事業所が中心
- 参入の背景：制度の安定化と市場機会の拡大
撤退・廃止の動向
- 主要撤退理由：人材確保困難、利用者確保困難、経営難
- 撤退事業所の特徴：開設間もない小規模事業所が多い
- 市場の特徴：参入と撤退が共存する動的な市場
市場動向の総括
成長要因
- 制度改正によるサービス拡充
- 児童発達支援ニーズの拡大
- 就労支援サービスの社会的認知向上
- 地域生活支援の重要性増大
課題要因
- 人材確保の困難
- 地域間格差の拡大
- 小規模事業所の経営安定性
- サービス質の標準化
事業者への示唆
参入機会の特定
- 成長サービス：児童発達支援、就労定着支援
- 参入余地のある地域：地方部での基本サービス
- 適正規模：定員15-25人の中規模事業所
成功要因
- 地域ニーズの詳細把握
- 人材確保・育成戦略
- 他事業所との連携体制
- 継続的な質の向上
本分析は2021年11月時点の公開データに基づいています。最新の動向については、定期的な情報更新をお勧めします。