サービス動向分析（2021年11月版）
概要
障害者福祉サービス29種別の市場動向を詳細に分析し、各サービスの成長性、競争状況、参入機会を明らかにします。事業者の皆様のサービス選択と戦略策定に活用いただける情報を提供します。
サービス種別成長率ランキング
新興・成長サービス
1. 就労定着支援
- 2018年制度開始の新しいサービス
- 企業就労者の定着支援ニーズが高い
- 事業所数：1,234事業所（制度開始から急速に拡大）
2. 自立生活援助
- 地域移行支援の重要性増大
- 一人暮らし支援のニーズ拡大
- 事業所数：301事業所（新規参入機会が豊富）
3. 居宅訪問型児童発達支援
- 重度障害児への在宅支援
- 専門性の高いサービス
- 事業所数：164事業所（需要に対して供給不足）
4. 放課後等デイサービス
- 学齢期の障害児支援の中核
- 保護者の就労支援効果
- 事業所数：14,663事業所（継続的な市場拡大）
5. 児童発達支援
- 早期療育の重要性認識
- 発達障害への関心の高まり
- 事業所数：8,680事業所（安定した需要基盤）
安定運営サービス
6. 就労移行支援
- 一般就労への橋渡し役
- 企業の障害者雇用義務化
- 事業所数：約1,200事業所
7. 計画相談支援
- サービス等利用計画の作成
- 相談支援の専門性向上
- 事業所数：約2,800事業所
8. 共同生活援助
- 地域生活支援の基盤
- 高齢化に伴う需要増
- 事業所数：約2,100事業所
成熟市場サービス
9. 居宅介護
- 最も基本的なサービス
- 市場成熟により競争激化
- 事業所数：約12,500事業所
10. 就労継続支援B型
- 最大規模のサービス
- 安定した需要基盤
- 事業所数：約12,800事業所
サービス分野別動向
訪問系サービス
市場規模: 全体の32.6%（47,508事業所）
主要サービス別分析
居宅介護
- 事業所数：19,535事業所
- 競争状況：激化（参入容易性高）
- 収益性：人件費上昇により低下傾向
- 戦略：効率的な訪問ルート、専門性向上
重度訪問介護
- 事業所数：17,132事業所
- 競争状況：中程度（専門性必要）
- 収益性：安定（長時間利用）
- 戦略：24時間対応体制、人材確保
行動援護
- 事業所数：2,199事業所
- 競争状況：限定的（高い専門性）
- 収益性：高い（専門性評価）
- 戦略：行動分析専門職の育成
同行援護
- 事業所数：6,880事業所
- 競争状況：中程度
- 収益性：中程度
- 戦略：視覚障害者のニーズ把握
居宅訪問型児童発達支援
- 事業所数：164事業所
- 競争状況：限定的（高度な専門性）
- 収益性：高い（専門性評価）
- 戦略：訪問療育の質の向上
保育所等訪問支援
- 事業所数：1,582事業所
- 競争状況：限定的（専門性必要）
- 収益性：中程度
- 戦略：保育所等との連携強化
通所・日中活動系サービス
市場規模: 全体の43.0%（62,661事業所）
放課後等デイサービス
- 事業所数：14,663事業所（急成長）
- 平均定員：8.8人
- 総定員数：128,349人
- 課題：質の確保、人材育成
就労継続支援B型
- 事業所数：13,245事業所（最大規模）
- 平均定員：17.0人
- 総定員数：225,407人
- 課題：工賃向上、多様な作業確保
生活介護
- 事業所数：10,407事業所
- 平均定員：25.3人
- 総定員数：263,749人
- 特徴：重度障害者向け日中活動サービス
児童発達支援
- 事業所数：8,680事業所
- 平均定員：9.7人
- 総定員数：83,951人
- 機会：早期療育、保護者支援
就労継続支援A型
- 事業所数：3,682事業所
- 平均定員：15.2人
- 総定員数：55,911人
- 課題：経営安定性、生産性向上
就労移行支援
- 事業所数：3,188事業所
- 平均定員：10.5人
- 総定員数：33,594人
- 機会：企業連携、専門性向上
短期入所
- 事業所数：6,094事業所
- 平均定員：5.5人
- 総定員数：33,696人
- 需要：レスパイトケアと緊急時対応
自立訓練（機能訓練・生活訓練）
- 事業所数：1,491事業所
- 平均定員：12.7人
- 総定員数：16,203人
- 特徴：地域生活への移行支援
医療型児童発達支援
- 事業所数：89事業所
- 平均定員：22.9人
- 総定員数：2,036人
- 課題：専門職確保
居住・入所系サービス
市場規模: 全体の9.0%（13,143事業所）
共同生活援助（グループホーム）
- 事業所数：10,012事業所
- 特徴：地域生活支援の基盤
- 課題：高齢化対応、職員確保
- 機会：重度障害者対応型の需要
施設入所支援
- 事業所数：2,484事業所
- 平均定員：47.9人
- 総定員数：118,989人
- 特徴：入所系サービスで最大規模
自立生活援助
- 事業所数：301事業所
- 特徴：一人暮らし障害者の見守り支援
- 機会：地域移行の促進に伴う需要増
福祉型・医療型障害児入所施設
- 事業所数：428事業所
- 平均定員：26.0人
- 総定員数：21,382人
- 特徴：専門性の高い入所支援
相談・支援系サービス
市場規模: 全体の15.4%（22,450事業所）
計画相談支援
- 事業所数：9,344事業所
- 特徴：サービス利用のゲートキーパー
- 課題：質の向上、人材確保
- 戦略：効率的な相談体制構築
障害児相談支援
- 事業所数：6,462事業所
- 特徴：児童の成長に合わせた計画作成
- 課題：専門性の確保、学校との連携
- 戦略：ライフステージを見据えた支援
地域相談支援（地域移行・地域定着）
- 事業所数：6,164事業所
- 特徴：入所施設等からの移行支援
- 課題：住まいの確保、地域資源開発
- 戦略：多機関連携の強化
就労定着支援
- 事業所数：1,234事業所
- 特徴：一般就労後の職場定着支援
- 機会：就労支援の質向上への社会的関心
- 戦略：企業との関係構築
新興サービスの詳細分析
就労定着支援（2018年制度開始）
サービス概要
- 一般就労後の定着支援
- 支援期間：最大3年間
- 支援内容：職場適応、生活支援
市場動向
- 事業所数：280事業所（急成長）
- 参入法人：就労移行支援事業所が多い
- 地域分布：都市部中心
事業機会
- 企業との連携体制構築
- 継続的な支援体制
- 専門性の高いサービス
自立生活援助（2018年制度開始）
サービス概要
- 一人暮らしの障害者支援
- 支援期間：標準1年間
- 支援内容：生活技能、緊急時対応
市場動向
- 事業所数：120事業所
- 参入法人：相談支援事業所が多い
- 地域分布：都市部・地方均等
事業機会
- 地域移行支援との連携
- 24時間対応体制
- 居住支援との組み合わせ
サービス複合化の動向
多機能型事業所の増加
背景
- 効率的な事業運営
- 利用者の多様なニーズ対応
- 収益の安定化
主要な組み合わせ
- 生活介護×就労継続支援B型
- 就労移行支援×就労継続支援A型
- 児童発達支援×放課後等デイサービス
メリット
- 人件費の効率化
- 利用者の継続支援
- 管理コストの削減
法人の多角化戦略
大手法人の動向
- 複数サービスの展開
- 地域での総合的支援
- スケールメリットの活用
中小法人の戦略
- 専門性の高いサービス
- 地域密着型運営
- ニッチ市場への参入
サービス別参入機会評価
高機会サービス（★★★）
- 就労定着支援：制度開始間もなく、成長性高い
- 居宅訪問型児童発達支援：専門性高く、競合少ない
- 自立生活援助：地域移行推進により需要増
中機会サービス（★★）
- 児童発達支援：成長市場だが競争激化
- 就労移行支援：安定需要だが専門性必要
- 計画相談支援：継続需要だが単価制約
要注意サービス（★）
- 居宅介護：市場飽和、価格競争激化
- 就労継続支援B型：参入容易だが差別化困難
- 放課後等デイサービス：急成長だが質の問題
今後の展望と戦略
市場展望
- 児童系サービス：継続的な需要拡大が期待
- 就労系サービス：企業連携による安定成長
- 新興サービス：制度定着に伴う急速な拡大
推奨戦略
- 専門性の向上：差別化の核となる
- 地域ニーズの把握：効果的な参入
- 人材確保・育成：持続可能な運営
- ICT活用：効率化とサービス向上
本分析は2021年11月時点のデータに基づいています。制度改正や社会情勢の変化により、今後の動向が変わる可能性があります。