障害福祉サービス市場概況分析（2022年3月版）
概要
本分析は、2022年3月時点のWAM（独立行政法人福祉医療機構）データに基づき、日本全国の障害福祉サービス市場の全体像を詳細に分析したものです。2021年11月データとの比較分析により、市場の成長動向と構造変化を明らかにします。
市場規模の概況
全体統計
2022年3月時点
- 総施設数: 149,540施設（前回比+3,603施設、+2.5%成長）
- 総定員数: 1,023,194名（前回比+16,726名、+1.7%成長）
- サービス種別: 29種類（変更なし）
- 対象地域: 全国47都道府県
成長トレンド分析
4ヶ月間（2021年11月→2022年3月）での成長実績：
- 月平均成長率: 0.6%
- 年間成長率: 約7.2%（推定）
- 新規施設開設: 月平均900施設以上
この成長率は、障害福祉サービス市場の継続的な拡大と、制度改正による需要増加を反映しています。
サービス構成分析
主要サービス別構成比（2022年3月）
- 居宅介護: 19,919施設（13.3%）【前回比+384施設】
- 重度訪問介護: 17,467施設（11.7%）【前回比+335施設】
- 放課後等デイサービス: 15,229施設（10.2%）【前回比+566施設】
- 就労継続支援B型: 13,587施設（9.1%）【前回比+342施設】
- 生活介護: 10,554施設（7.1%）【前回比+147施設】
サービスカテゴリー別分析
訪問系サービス
- 施設数: 48,451施設（32.4%）
- 成長率: +1.9%（+943施設）
- 特徴: 居宅介護・重度訪問介護を中心に在宅支援ニーズの高まりを反映した堅調な成長
通所・日中活動系サービス
- 施設数: 63,570施設（42.5%）
- 成長率: +2.7%（+1,668施設）
- 総定員: 797,243名
- 特徴: 放課後等デイサービスや就労継続支援Bを中心に市場の中核を占める
居住・入所系サービス
- 施設数: 13,844施設（9.3%）
- 成長率: +2.9%（+384施設）
- 総定員: 225,951名
- 特徴: 共同生活援助の成長が目立ち、地域生活移行の受け皿として機能拡大
相談・支援系サービス
- 施設数: 23,675施設（15.8%）
- 成長率: +2.2%（+508施設）
- 特徴: 計画相談支援の体制強化と障害児相談支援の需要増加による安定成長
法人格別事業者分析
事業者構成（2022年3月）
-
株式会社: 45,652施設（30.5%）
- 平均定員: 4.1名
- 特徴: 小規模施設、訪問系サービスが得意分野
-
社会福祉法人: 49,866施設（33.3%）
- 平均定員: 10.8名
- 特徴: 大規模施設運営、従来型サービスが中心
-
NPO法人: 17,828施設（11.9%）
- 平均定員: 5.8名
- 特徴: 地域密着型サービス、コミュニティベース
-
その他法人: 36,194施設（24.2%）
- 平均定員: 5.3名
- 医療法人、自治体、協同組合等を含む
市場集約度分析
大手事業者による市場シェア（施設数ベース）
- 株式会社ニチイ学館: 2,005施設（1.34%）
- アースサポート株式会社: 372施設（0.25%）
- 株式会社クラ・ゼミ: 353施設（0.24%）
- 株式会社ケア21: 259施設（0.17%）
- 株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ: 257施設（0.17%）
上位5社で2.17%のシェアを占めており、市場の分散性が高い構造が継続。中小規模事業者による多様なサービス提供が市場の特徴。
地域分布分析
都道府県別施設数（上位10位）
- 大阪府: 18,229施設（12.2%）【全国最大】
- 東京都: 10,550施設（7.1%）【首都圏の中核】
- 愛知県: 9,360施設（6.3%）【中部圏の中心】
- 北海道: 8,751施設（5.9%）【地方部最大】
- 神奈川県: 7,622施設（5.1%）【首都圏第2位】
地域特性分析
大都市圏（三大都市圏）
- 施設数: 56,829施設（38.0%）
- 特徴: 人口集中に対応、高度専門性サービス集積
地方圏
- 施設数: 92,711施設（62.0%）
- 特徴: 人口当たりサービス密度が高い、地域密着型サービス
注目ポイント: 北海道の+10.8%成長は全国最高レベルで、地方部での施設整備が急速に進行。
市場成熟度評価
成熟サービス（安定成長期）
- 居宅介護、重度訪問介護、生活介護
- 成長率: 1-2%台の安定成長
- 市場シェア: 高位安定
成長サービス（拡大期）
- 放課後等デイサービス（+3.9%）
- 共同生活援助（+3.7%）
- 保育所等訪問支援（+5.8%）
新興サービス（導入期）
- 就労定着支援（+3.2%）
- 自立生活援助（+5.3%）
- 高成長率を維持し、市場への定着が進行
今後の市場展望
成長要因
- 制度拡充: 障害者総合支援法の段階的拡充
- 社会意識変化: 共生社会実現への社会的要請
- 人口動態: 高齢化に伴う障害者数の増加
- 地域格差是正: 地方部でのサービス基盤整備
市場機会
- 児童発達支援: 早期療育ニーズの高まり
- 就労支援: 障害者雇用促進法改正の影響
- 地方展開: 未充足地域での事業機会
- 専門性強化: 重度・複合障害への対応
本分析は2022年3月時点のデータに基づき、2021年11月データとの比較により市場動向を分析しています。数値は WAM公開データを基に算出しており、一部推計を含みます。