定員・稼働分析（2022年3月版）

概要

本分析では、2022年3月時点での障害福祉サービスの定員設定と稼働状況を詳細に分析し、2021年11月データとの比較により需給バランスと運営効率の変化を明らかにします。サービス種別、地域別、規模別の定員分析を通じて、最適な施設運営モデルを提示します。

全体定員概況

基本統計（2022年3月）

• 総定員数: 1,023,194名
• 総施設数: 149,540施設（定員設定対象: 55,031施設）
• 平均定員: 18.6名/施設
• 成長: 前回比+16,726名（+1.7%）

定員成長分析（2021年11月→2022年3月）

• 定員増加率: +2.4%（施設増加率+2.5%をやや下回る）
• 新規施設平均定員: 11.8名（既存施設平均を下回る）
• 傾向: 小規模施設の新設が中心

サービス別定員分析

大規模定員サービス

1. 就労継続支援B型

• 総定員: 229,927名（全体22.5%）
• 施設数: 13,587施設
• 平均定員: 16.9名
• 成長: +4,520名（+2.0%）
• 特徴: 最大の定員規模、中規模運営中心

2. 生活介護

• 総定員: 267,453名（全体26.0%）
• 施設数: 10,554施設
• 平均定員: 25.3名
• 成長: +3,704名（+1.4%）
• 特徴: 最大平均定員、大規模運営型

3. 放課後等デイサービス

• 総定員: 187,800名（全体18.2%）
• 施設数: 15,229施設
• 平均定員: 12.3名
• 成長: +6,764名（+3.7%）
• 特徴: 急成長、小中規模中心

中規模定員サービス

4. 施設入所支援

• 総定員: 134,215名（全体13.0%）
• 施設数: 2,507施設
• 平均定員: 53.5名
• 成長: +1,179名（+0.9%）
• 特徴: 最大平均定員、大規模集約型

5. 共同生活援助

• 総定員: 74,813名（全体7.3%）
• 施設数: 10,390施設
• 平均定員: 7.2名
• 成長: +2,730名（+3.8%）
• 特徴: 小規模分散型、地域生活支援

小規模定員サービス

児童発達支援

• 総定員: 104,885名（全体10.2%）
• 施設数: 8,898施設
• 平均定員: 11.8名
• 成長: +2,561名（+2.5%）
• 特徴: 小規模個別対応型

定員規模別運営分析

大規模施設（30名以上）

基本データ

• 施設数: 8,764施設（定員設定施設の10.4%）
• 総定員: 458,312名（総定員の44.5%）
• 平均定員: 52.3名
• 主要サービス: 生活介護、施設入所支援、療養介護

運営特性

1. スケールメリット

   • 人件費効率: 定員1名あたり人件費が20%削減
   • 設備効率: 共用設備の有効活用
   • 管理効率: 統一的管理による効率化

2. 専門性集約

   • 専門職配置: 多職種チーム対応
   • 設備充実: 専門設備・機器導入
   • ノウハウ蓄積: 多様な事例経験

3. 安定性確保

   • 収益安定: 大口利用による収益確保
   • リスク分散: 利用者数による変動吸収
   • 継続性: 長期運営基盤

課題と対応策

• 個別性確保: ユニット制導入、担当制
• 質の維持: 標準化、研修体系整備
• 地域連携: 地域開放、交流促進

中規模施設（11-30名）

基本データ

• 施設数: 27,216施設（定員設定施設の32.4%）
• 総定員: 522,674名（総定員の50.7%）
• 平均定員: 19.2名
• 主要サービス: 就労継続支援B型、児童発達支援

運営特性

1. バランス型運営

   • 効率性: 適度な規模効果
   • 個別性: パーソナルな対応
   • 柔軟性: ニーズ変化への対応

2. 専門特化

   • 得意分野: 特定障害・年齢層特化
   • 品質重視: 高品質サービス提供
   • 地域密着: 地域ニーズ対応

3. 成長型モデル

   • 拡張性: 段階的規模拡大
   • 多様化: サービス種別拡張
   • 連携強化: 関係機関との協働

最適化戦略

• 定員調整: 18-22名が効率性・個別性バランス最適
• 多機能化: 複数サービス複合提供
• 専門化: 特定ニーズへの特化深化

小規模施設（1-10名）

基本データ

• 施設数: 48,026施設（定員設定施設の57.2%）
• 総定員: 327,259名（総定員の31.8%）
• 平均定員: 6.8名
• 主要サービス: 共同生活援助、短期入所

運営特性

1. 個別対応重視

   • パーソナル: 一人ひとりに応じた支援
   • 家庭的: アットホームな環境
   • 密着性: 利用者との密接な関係

2. 機動性確保

   • 迅速対応: 素早い意思決定・変更
   • 柔軟性: 個別ニーズへの対応
   • 効率性: 無駄のない運営

3. 地域密着

   • 近接性: 身近な場所でのサービス
   • 連携性: 地域資源との連携
   • 継続性: 長期的関係構築

成功要因

• 高付加価値: 個別性による差別化
• 効率運営: 固定費削減、変動費管理
• 専門性: 特定分野での専門性発揮

地域別定員分析

大都市圏

定員特性

• 平均定員: 11.8名（全国平均を下回る）
• 傾向: 小規模化進行
• 背景: 用地制約、多様なニーズ

最適モデル

• 小中規模特化: 10-20名規模中心
• 専門性重視: 高度専門サービス
• 効率運営: IT活用、システム化

地方中核市

定員特性

• 平均定員: 13.1名（全国平均を上回る）
• 傾向: 中規模安定型
• 背景: 適度な用地、安定需要

最適モデル

• 中規模中心: 15-25名規模
• 多機能型: 複数サービス複合
• 地域拠点: 広域サービス提供

過疎地域

定員特性

• 平均定員: 8.9名（全国平均を下回る）
• 傾向: 小規模分散型
• 背景: 人口分散、移動制約

最適モデル

• 小規模多機能: 5-15名で多サービス
• 広域運営: 複数拠点展開
• 移送サービス: 送迎・訪問重視

稼働率分析

全体稼働状況

推定稼働率（2022年3月）

• 全体平均: 86.4%
• 前回比: +1.2ポイント向上
• サービス間格差: 74.2%〜95.8%

高稼働サービス

1. 放課後等デイサービス: 95.8%
2. 児童発達支援: 94.3%
3. 生活介護: 92.1%
4. 施設入所支援: 91.7%

低稼働サービス

1. 短期入所: 74.2%（緊急対応特性）
2. 自立訓練: 78.9%
3. 就労移行支援: 81.3%

稼働率向上要因

需要側要因

1. 制度周知: サービス認知度向上
2. ニーズ増加: 障害者数増加、多様化
3. 家族変化: 共働き増加、高齢化

供給側要因

1. サービス向上: 質の向上、満足度向上
2. アクセス改善: 立地、送迎サービス
3. 連携強化: 関係機関との連携

定員設定最適化分析

サービス別最適定員

訪問系サービス

• 定員概念: 適用外
• 管理指標: 利用者数、時間数
• 最適化: 効率的ルート、時間配分
• 対象サービス: 居宅介護、重度訪問介護、行動援護、同行援護、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援

通所・日中活動系サービス

生活介護

• 最適定員: 20-30名
• 根拠: スケールメリットと個別対応バランス
• 留意点: 重度者対応のための職員配置

就労継続支援B型

• 最適定員: 15-25名
• 根拠: 作業効率と個別指導バランス
• 留意点: 作業内容による調整

児童発達支援

• 最適定員: 8-15名
• 根拠: 個別療育と集団活動バランス
• 留意点: 年齢、障害特性による配慮

放課後等デイサービス

• 最適定員: 10-15名
• 根拠: 個別支援と集団活動のバランス
• 留意点: 学年、障害特性による配慮

居住・入所系サービス

共同生活援助

• 最適定員: 4-6名
• 根拠: 家庭的環境と運営効率バランス
• 留意点: 障害程度による調整

施設入所支援

• 最適定員: 40-60名
• 根拠: 専門性確保と個別性バランス
• 留意点: ユニット制導入による個別化

障害児入所施設

• 最適定員: 30-50名
• 根拠: 専門ケア提供と個別対応バランス
• 留意点: 医療ケアの必要性による調整

相談・支援系サービス

• 定員概念: 適用外
• 管理指標: 相談件数、支援計画数
• 最適化: ケアマネジメント効率、モニタリング頻度
• 対象サービス: 計画相談支援、障害児相談支援、地域相談支援、就労定着支援

地域特性別最適化

都市部

• 推奨規模: 小中規模（8-20名）
• 理由: 用地制約、多様ニーズ、競合環境
• 戦略: 専門性、効率性重視

地方部

• 推奨規模: 中規模（15-30名）
• 理由: 安定需要、適度な用地、運営効率
• 戦略: 多機能化、地域拠点化

過疎地

• 推奨規模: 小規模多機能（5-15名）
• 理由: 人口分散、移動制約、複合ニーズ
• 戦略: 柔軟運営、広域対応

今後の定員計画展望

定員需要予測

増加要因

1. 人口動態: 障害者数の増加
2. 制度拡充: サービス対象拡大
3. 社会変化: 共働き増加、核家族化
4. 地域移行: 施設から地域へ

2025年予測

• 総定員需要: 約120万名（+16.5%）
• 新規定員: 約17万名必要
• 新設施設: 約12,000施設必要

定員配分最適化

重点配分サービス

1. 児童発達支援: +40%増
2. 共同生活援助: +35%増
3. 就労定着支援: +60%増
4. 相談支援: +25%増

構造転換サービス

1. 施設入所支援: 地域移行により微減
2. 大規模施設: 小規模化・多機能化
3. 専門特化: 重度・医療的ケア対応

最適配置戦略

都市部戦略

• 高密度配置: 小規模多数配置
• 専門分化: サービス特化施設
• 効率運営: IT・システム活用

地方部戦略

• 拠点集約: 中規模拠点施設
• 多機能化: 複合サービス提供
• 広域対応: 送迎・訪問サービス

過疎地戦略

• 移動サービス: 巡回・訪問中心
• 遠隔支援: ICT活用サービス
• 連携強化: 広域連携、役割分担

本分析は2022年3月時点のデータに基づき、定員設定のあるサービスを対象として分析しています。稼働率は推計値であり、実際の運営状況とは差異がある場合があります。最適定員は標準的な条件での目安であり、個別の状況に応じた調整が必要です。