障害福祉サービスガイド

WAM NETのオープンデータを基にした障害福祉サービスの検索サイトです。自治体ごとの事業所の一覧を表示するまでを目的にしているので各事業所の詳細は公式サイトやWAMを検索してください。事業所の情報を追加することも可能です。共同生活援助は専用の障害者グループホームガイドもあります。

サービス動向分析(2025年9月版)

概要

本分析は、2025年9月時点のWAMデータに基づき、障害福祉サービス市場における各サービス種別の最新動向を分析したものです。2025年3月データとの直接比較に加え、2021年11月からの長期トレンドを包括的に分析し、サービス種別ごとの成長特性や市場の構造変化を明らかにします。

サービス種別の成長分析

サービス別成長率ランキング

成長率上位サービス(2025年3月→2025年9月)

順位 サービス種別 前回比成長率 施設数 前回施設数 増加数
1 保育所等訪問支援 +11.2% 3,711施設 3,338施設 +373施設
2 自立訓練(機能訓練) +7.1% 285施設 266施設 +19施設
3 児童発達支援 +5.8% 16,247施設 15,357施設 +890施設
4 放課後等デイサービス +4.9% 24,156施設 23,031施設 +1,125施設
5 就労継続支援B型 +4.6% 19,909施設 19,034施設 +875施設

成長率上位5サービス(2025年3月→2025年9月、%)

成長率下位サービス(2025年3月→2025年9月)

順位 サービス種別 前回比成長率 施設数 前回施設数 増加数
1 医療型児童発達支援 -30.4% 39施設 56施設 -17施設
2 重度障害者等包括支援 -5.0% 19施設 20施設 -1施設
3 宿泊型自立訓練 -1.8% 224施設 228施設 -4施設
4 就労移行支援 -0.8% 3,389施設 3,418施設 -29施設
5 自立訓練(生活訓練) -0.1% 1,626施設 1,627施設 -1施設

成長率上位のサービスでは、保育所等訪問支援が+11.2%と突出した成長を記録しています。これは、障害児の地域生活支援や保育所・学校との連携強化の政策方針、早期発見・早期支援の取り組み強化を反映しています。

一方、成長率下位のサービスには、医療型児童発達支援が-30.4%と大幅な減少を示しており、これは児童発達支援への統合が進んでいることを反映しています。また、就労移行支援が-0.8%と初めて減少に転じており、就労定着支援へのシフトや市場の成熟化を示唆しています。

長期的成長トレンド(2021年11月~2025年9月)

約4年間の長期成長率上位サービス

順位 サービス種別 長期成長率 2021年11月 2025年9月 増加数
1 保育所等訪問支援 +134.6% 1,582施設 3,711施設 +2,129施設
2 居宅訪問型児童発達支援 +111.0% 164施設 346施設 +182施設
3 児童発達支援 +87.2% 8,680施設 16,247施設 +7,567施設
4 自立生活援助 +66.8% 301施設 502施設 +201施設
5 放課後等デイサービス +64.8% 14,663施設 24,156施設 +9,493施設

長期成長率上位5サービス(2021年11月~2025年9月、%)

長期的な視点で見ると、保育所等訪問支援(+134.6%)と居宅訪問型児童発達支援(+111.0%)の成長が突出しています。児童発達支援(+87.2%)や放課後等デイサービス(+64.8%)も非常に高い成長率を示しており、児童向け障害福祉サービスへの需要の高まりが顕著です。

サービス種別の成長段階分析

各サービスの成長パターンから、以下のように成長段階を分類できます:

  1. 急成長期(前期比+6%以上)

    • 保育所等訪問支援、自立訓練(機能訓練)
    • 特徴:ニーズの高まり、新規参入の活発化
    • 今後の見通し:当面は高成長が継続する見込み
  2. 安定成長期(前期比+3~6%)

    • 児童発達支援、放課後等デイサービス、就労継続支援B型、障害児相談支援
    • 特徴:市場が形成され、安定したニーズが存在
    • 今後の見通し:安定した成長が継続
  3. 成熟期(前期比+1~3%)

    • 居宅介護、共同生活援助、短期入所、計画相談支援
    • 特徴:供給が進み、地域によっては競争が激化
    • 今後の見通し:質的向上と効率化が重要性を増す
  4. 安定期(前期比+1%未満または減少)

    • 就労移行支援、施設入所支援、療養介護、重度障害者等包括支援
    • 特徴:専門性が高く、新規参入が限定的
    • 今後の見通し:既存事業所による安定的な運営が継続

サービスカテゴリー別の動向

児童系サービスの動向

児童系サービスは全体として引き続き堅調な成長を示しています。

児童系サービスの成長率比較

サービス種別 2025年9月成長率 2025年3月成長率 差異 2025年9月施設数
児童発達支援 +5.8% +6.6% -0.8% 16,247施設
放課後等デイサービス +4.9% +5.0% -0.1% 24,156施設
障害児相談支援 +4.3% +5.0% -0.7% 9,509施設
保育所等訪問支援 +11.2% +6.7% +4.5% 3,711施設
居宅訪問型児童発達支援 +3.6% +5.8% -2.2% 346施設

児童系サービス全体の特徴的な動向として、以下の点が挙げられます:

  1. 保育所等訪問支援の急成長:
    前回の+6.7%から+11.2%へと成長率が加速しており、障害児支援の地域連携強化の流れを反映しています。

  2. 安定した成長の継続:
    児童発達支援と放課後等デイサービスは前回とほぼ同水準の成長率を維持しており、市場の安定成長が継続しています。

  3. 専門特化型への移行:
    一般的なサービスよりも、医療的ケア児対応や発達障害専門など、特定ニーズに特化したサービスの成長率が高くなっています。

  4. 多機能型展開の増加:
    児童発達支援と放課後等デイサービスの併設型が増加しており、複数年齢層への一貫した支援提供が進んでいます。

就労支援系サービスの動向

就労支援系サービスは、サービス種別によって成長パターンに差が見られます。

就労支援系サービスの成長率比較

サービス種別 2025年9月成長率 2025年3月成長率 差異 2025年9月施設数
就労移行支援 -0.8% -0.2% -0.6% 3,389施設
就労継続支援A型 +0.6% -0.9% +1.5% 4,633施設
就労継続支援B型 +4.6% +4.9% -0.3% 19,909施設
就労定着支援 +4.1% +9.1% -5.0% 1,935施設

就労支援系サービスの特徴的な動向として、以下の点が挙げられます:

  1. 就労移行支援の減少転換:
    就労移行支援が-0.8%と減少に転じました。これは市場の成熟化と就労定着支援への重点シフトを示しています。

  2. 就労継続支援A型の回復:
    前回の-0.9%から+0.6%と、減少から増加に転じました。報酬改定後の調整期間を経て、安定化の兆しが見られます。

  3. 就労継続支援B型の安定成長:
    +4.6%と市場全体を上回る成長を維持しており、幅広いニーズに対応したサービスとして安定した需要があります。

  4. 就労定着支援の成長鈍化:
    前回の+9.1%から+4.1%へと成長率が低下しましたが、依然として市場平均を上回る成長を維持しています。

地域生活支援系サービスの動向

地域での自立した生活を支援するサービスは、全体として安定した成長を示しています。

地域生活支援系サービスの成長率比較

サービス種別 2025年9月成長率 2025年3月成長率 差異 2025年9月施設数
共同生活援助 +3.2% +2.0% +1.2% 15,537施設
自立生活援助 +3.7% +6.4% -2.7% 502施設
地域移行支援 +0.7% +4.9% -4.2% 3,707施設
地域定着支援 +0.6% +5.1% -4.5% 3,569施設

地域生活支援系サービスの特徴的な動向として、以下の点が挙げられます:

  1. 共同生活援助の成長回復:
    前回の+2.0%から+3.2%へと成長率が回復しており、住まいの場としてのグループホーム需要が継続しています。

  2. 自立生活援助の安定成長:
    成長率はやや低下したものの、+3.7%と市場平均を上回る成長を維持しています。

  3. 地域相談支援の成長鈍化:
    地域移行支援、地域定着支援ともに成長率が低下しており、前回の高成長からの調整期間に入っています。

相談支援の動向

相談支援は、サービス全体のコーディネートを担う重要な機能として安定した成長を示しています。

相談支援サービスの成長率比較

サービス種別 2025年9月成長率 2025年3月成長率 差異 2025年9月施設数
計画相談支援 +3.2% +7.1% -3.9% 12,796施設
障害児相談支援 +4.3% +7.8% -3.5% 9,509施設

相談支援サービスは、前回と比較して成長率がやや低下していますが、依然として市場平均を上回る安定した成長を維持しています。

サービス提供形態の変化

多機能型事業所の増加

単独のサービス提供ではなく、複数のサービスを組み合わせて提供する「多機能型事業所」が増加傾向にあります。

主な多機能型の組み合わせと特徴

組み合わせパターン 特徴
児童発達支援+放課後等デイサービス ライフステージに沿った一貫支援
生活介護+短期入所 日中活動と緊急時対応の一体化
就労移行支援+就労定着支援 就労支援の入口から定着までの一貫体制
計画相談+地域移行+地域定着 総合的な地域生活支援

多機能型展開のメリットとしては、①利用者の多様なニーズへの対応、②事業の安定性の向上、③人材・設備の効率的活用、④ライフステージに応じた切れ目のない支援などが挙げられます。

専門特化型サービスの動向

特定の障害特性やニーズに特化した専門性の高いサービス提供が増加しています。

主な専門特化型サービスの動向

専門特化タイプ 特徴的な展開
医療的ケア児対応型 看護師配置、医療機関連携
強度行動障害対応型 構造化された環境、専門研修受講スタッフ
発達障害専門型 感覚統合療法、ソーシャルスキル訓練
精神障害者特化型 リカバリープログラム、段階的就労支援
重症心身障害児者対応型 医療機関併設、多職種連携

専門特化型サービスは、一般的なサービスより高い利用率と安定した経営を実現しているケースが多く、差別化戦略として有効です。

ICT活用・遠隔支援の進展

デジタル技術の活用による新しいサービス提供形態も広がりを見せています。

ICT活用サービスの動向

ICT活用タイプ 特徴
オンライン相談併用型 対面とオンラインの併用による相談支援
リモートモニタリング活用型 遠隔での状況確認・支援(特に地方部)
ICT就労支援型 デジタルスキル習得、テレワーク活用

ICTの活用は、特に人材不足や地理的制約の大きい地方部で効果を発揮しており、①支援の空白地域解消、②専門職の効率的活用、③利用者の利便性向上などにつながっています。

サービス別の市場特性と今後の見通し

成長期待の高いサービス

今後も高い成長が期待されるサービスとその背景要因について分析します。

  1. 保育所等訪問支援

    • 現状:+11.2%と最高成長率を記録
    • 背景要因:インクルーシブ教育の推進、早期支援の重視
    • 今後の見通し:高成長が継続する見込み
  2. 児童発達支援

    • 現状:+5.8%と安定した高成長を維持
    • 背景要因:発達障害の早期発見・早期支援の重視
    • 今後の見通し:当面は5%前後の成長が継続
  3. 就労定着支援

    • 現状:+4.1%で市場平均を上回る成長
    • 背景要因:障害者雇用率の上昇、定着支援の重要性認識
    • 今後の見通し:安定した成長が続く見込み
  4. 共同生活援助

    • 現状:+3.2%と成長が回復
    • 背景要因:住まいの場のニーズ増加、親元からの自立ニーズ
    • 今後の見通し:安定した成長が継続

成熟化が進むサービス

市場の成熟化が進み、量的拡大よりも質的向上が求められるサービスについて分析します。

  1. 就労移行支援

    • 現状:-0.8%と初の減少転換
    • 背景要因:市場の成熟化、就労定着支援へのシフト
    • 今後の課題:専門性の強化、企業連携の深化
  2. 居宅介護

    • 現状:+1.5%と低成長
    • 背景要因:人材確保の難しさ、市場の成熟化
    • 今後の課題:サービスの効率化、専門性向上
  3. 施設入所支援

    • 現状:±0%と横ばい
    • 背景要因:地域移行政策、新規整備の制限
    • 今後の課題:既存施設の質的向上、地域移行支援

総括

2025年9月時点の障害福祉サービス市場は、全体として安定成長を続けながらも、サービス種別によって明確に異なる成長段階にあることが確認できます。

市場全体の特徴として、以下の傾向が顕著になっています:

  1. 児童系サービスの継続的成長: 保育所等訪問支援、児童発達支援、放課後等デイサービスが市場を牽引
  2. 就労支援系サービスの構造変化: 就労移行支援の減少転換と就労定着支援への重点シフト
  3. 地域生活支援の安定成長: 共同生活援助を中心に安定した成長が継続
  4. 専門特化型サービスの台頭: 医療的ケア対応、強度行動障害対応など専門性の高いサービスが増加

今後は、単なる量的拡大よりも質の向上と専門性の強化が重要となり、利用者のニーズに合わせた柔軟で効果的なサービス提供が求められるでしょう。また、人材確保や制度改正への対応など、事業運営上の課題に適切に対処しながら、持続可能な支援体制を構築していくことが事業者に求められます。


本分析は2025年9月時点のWAMデータに基づき、2025年3月との比較によりサービス種別ごとの動向を分析したものです。全ての数値は公開データを基に算出しており、一部推計を含みます。長期トレンド分析は2021年11月からのデータを使用しています。本記事が事業者の皆様のサービス選択と提供戦略に寄与することを願っています。

2025年09月の記事

障害福祉サービス市場概況分析(2025年9月版)

障害福祉サービス市場は成長率3.0%と安定成長を維持し、総施設数は20.4万施設に到達。2021年11月から約39%増加し、年間平均約9%の堅調な成長を継続。相談系サービスや児童系サービスの成長が顕著で、特に保育所等訪問支援は+11.2%と高成長。株式会社の構成比が37.6%に達し、市場の多様化が進展。今後は量的拡大から質的向上へのシフトが進む見通し。

地域別市場分析(2025年9月版)

障害福祉サービス市場における地域間格差は継続的に是正傾向にあり、大都市圏と地方圏の成長率格差は縮小。人口10万人あたりの施設数は地方圏が大都市圏を上回る状況が継続。大阪府が25,569施設で首位を維持し、東京都(13,941施設)の約1.8倍の規模。地域特性に応じた発展パターンが明確化し、都市規模別の戦略的展開が重要に。

サービス動向分析(2025年9月版)

障害福祉サービス市場は安定成長を続け、サービス種別による成長段階の差異が明確化。保育所等訪問支援が+11.2%と最高成長を記録し、児童発達支援+5.8%、放課後等デイサービス+4.9%と児童系サービスが堅調。一方、医療型児童発達支援は-30.4%と統合が進行。就労移行支援は-0.8%と初の減少転換。専門特化型サービスと複合型展開が今後の成長戦略の鍵。

事業モデル分析(2025年9月版)

障害福祉サービス市場では、株式会社が37.6%のシェアを占め、約4年間で75%の成長を達成。社会福祉法人は26.3%で安定基盤を維持。規模別では大規模事業者と小規模専門特化型事業者の二極化が進行。人材確保が最大の経営課題となる中、ICT活用やデータドリブン経営が成功の鍵に。地域特性を活かした事業展開と持続可能な運営モデルの構築が重要。

定員・利用率分析(2025年9月版)

障害福祉サービス市場では、サービス種別ごとの適正定員規模が確立。総定員数は1,383,988名で前回比+4.1%増加。療養介護の平均定員86.6名が最大、放課後等デイサービス8.5名が最小。定員規模による収益性格差は継続し、大規模施設ほど効率的な運営が可能。地域特性による定員設計の差異も明確で、地方圏が大都市圏より平均定員が大きい傾向が継続。

成長機会分析(2025年9月版)

2025年9月のWAMデータ分析から、障害福祉サービス市場における成長機会を特定。首都圏周辺県(神奈川・埼玉・千葉)では引き続き供給不足が継続。保育所等訪問支援が+11.2%と最高成長率を記録し、児童系サービスの成長機会が継続。専門特化型サービス(医療的ケア児支援、強度行動障害対応等)での需給ギャップが明確で、新規参入の余地が大きい。