定員・利用率分析（2022年9月版）
概要
本分析は、2022年9月時点の障害福祉サービス事業所の定員設定と利用実態を詳細に分析し、前回（2022年3月版）との比較も交えつつ、事業所規模による収益性の違いと効率的な運営規模を明らかにするものです。総定員1,067,383名のデータから、各サービス種別の適正定員と運営戦略を提示します。
全体定員分析
定員規模別事業所分布
大規模事業所（定員30名以上）
- 事業所数: 8,913施設（15.3%）
- 総定員: 452,010名（42.3%）
- 平均定員: 50.7名
- 前期比: +184施設（+2.1%）
中規模事業所（定員11-30名）
- 事業所数: 18,160施設（31.2%）
- 総定員: 350,477名（32.8%）
- 平均定員: 19.3名
- 前期比: +954施設（+5.5%）
小規模事業所（定員1-10名）
- 事業所数: 31,114施設（53.5%）
- 総定員: 264,896名（24.8%）
- 平均定員: 8.5名
- 前期比: +2,018施設（+6.9%）
定員規模トレンド分析
小規模化の進行
- 小規模事業所の割合が前期52.9%から53.5%へ拡大
- 新規開設の70%以上が小規模事業所
- 個別対応重視の流れを反映
中規模事業所の成長
- 最も高い成長率（+5.5%）を記録
- 効率性と個別性のバランスが評価
- 新規参入の主要ターゲット規模
サービス別定員分析
通所・日中活動系サービスの定員特性
生活介護（平均定員：25.1名）
- 総定員: 274,241名（全体の25.7%）
- 定員分布:
- 10名以下: 2,450施設（22.4%）
- 11-30名: 5,893施設（53.8%）
- 31名以上: 2,600施設（23.8%）
- 特徴: 中規模運営が主流、地域密着型が中心
効率的定員の考察
- 15-25名: 最も効率的な運営規模
- 30名以上: 専門職配置基準をクリアしやすい
- 10名以下: 個別対応重視、高単価サービス
就労継続支援B型（平均定員：17.0名）
- 総定員: 242,728名（全体の22.7%）
- 定員分布:
- 10名以下: 4,280施設（30.0%）
- 11-20名: 6,850施設（48.0%）
- 21名以上: 3,138施設（22.0%）
- 特徴: 小中規模運営が主流、作業効率重視
効率的定員の考察
- 12-18名: 作業効率と個別対応のバランス
- 20名以上: スケールメリット活用可能
- 10名以下: 専門作業・高工賃実現型
放課後等デイサービス（平均定員：8.6名）
- 総定員: 141,688名（全体の13.3%）
- 定員分布:
- 5名以下: 2,050施設（12.5%）
- 6-10名: 11,250施設（68.5%）
- 11名以上: 3,116施設（19.0%）
- 特徴: 小規模運営が主流、個別対応重視
効率的定員の考察
- 8-10名: 最も一般的で効率的な規模
- 5名以下: 重度対応・個別特化型
- 11名以上: 学習支援・集団活動重視型
児童発達支援（平均定員：9.4名）
- 総定員: 94,267名（全体の8.8%）
- 定員分布:
- 5名以下: 1,500施設（15.0%）
- 6-10名: 6,502施設（65.0%）
- 11名以上: 2,001施設（20.0%）
- 特徴: 小規模個別対応が主流、療育専門性重視
効率的定員の考察
- 6-10名: 療育効果と経営効率のバランス
- 5名以下: 重度・個別特化型
- 11名以上: 集団療育・親子支援型
居住・入所系サービスの定員特性
施設入所支援（平均定員：48.1名）
- 総定員: 120,087名（全体の11.3%）
- 定員分布:
- 30名以下: 612施設（24.5%）
- 31-50名: 1,249施設（50.0%）
- 51名以上: 638施設（25.5%）
- 特徴: 中大規模運営が主流、24時間支援体制
効率的定員の考察
- 40-50名: 最も効率的な運営規模
- 30名以下: 個別対応重視、高品質サービス
- 51名以上: スケールメリット追求型
共同生活援助（グループホーム）
- 総事業所: 10,974施設
- 特徴: 定員設定なし、個別の住居型サービス
- 運営形態: 5-6名の小規模が主流
地域別定員分析
都道府県別平均定員比較
大規模運営地域（平均定員15名以上）
- 北海道: 18.2名（広域サービス、効率重視）
- 青森県: 16.8名（地方部特有の大規模運営）
- 岩手県: 16.5名（社会福祉法人中心の運営）
- 秋田県: 16.1名（地域拠点型サービス）
小規模運営地域（平均定員10名以下）
- 東京都: 6.8名（高コスト環境、小規模特化）
- 神奈川県: 8.2名（住宅地立地、個別対応）
- 埼玉県: 8.9名（児童系サービス多数）
- 千葉県: 9.1名（地域密着型運営）
地域特性による適正定員
都市部の適正定員
- 土地制約: 小規模運営が主流
- 競争環境: 個別対応による差別化
- 推奨定員: 8-15名
地方部の適正定員
- 広域サービス: 効率的な規模設定
- 人材確保: 一定規模による安定運営
- 推奨定員: 15-25名
収益性分析
定員規模別収益構造
小規模事業所（定員1-10名）
収益特性
- 単価: 高単価サービスが中心
- 効率: 個別対応による高付加価値
- コスト: 固定費の負担大、人件費率高
収益向上策
- 専門性: 特化した専門サービス
- 品質: 高品質による差別化
- 効率化: ICT活用による業務効率化
- 連携: 他事業者との連携による相乗効果
中規模事業所（定員11-30名）
収益特性
- バランス: 効率と品質のバランス
- 安定性: 安定した利用者確保
- 専門職: 専門職配置による加算取得
収益向上策
- 多機能: 複数サービスの展開
- 加算: 各種加算の積極的取得
- 稼働率: 高稼働率の維持
- コスト管理: 効率的なコスト管理
大規模事業所（定員31名以上）
収益特性
- スケール: 規模の経済効果
- 専門性: 多職種チームによる専門的支援
- 安定性: 安定した事業基盤
収益向上策
- 総合化: 多機能・多サービス展開
- 専門化: 重度対応・医療連携
- 効率化: 業務標準化による効率運営
- 人材育成: 体系的な人材育成
適正定員設定の指針
サービス別推奨定員
通所・日中活動系サービス
- 生活介護: 15-25名（個別対応と効率のバランス）
- 就労継続支援B型: 12-20名（作業効率重視）
- 就労継続支援A型: 15-20名（労働基準法遵守）
- 児童発達支援: 6-10名（療育効果重視）
- 放課後等デイサービス: 8-10名（個別対応重視）
居住・入所系サービス
- 施設入所支援: 40-50名（24時間支援体制）
- 共同生活援助: 5-6名（家庭的環境）
訪問系サービス
- 定員設定なし: 人員基準に基づく運営
相談・支援系サービス
- 定員設定なし: 相談支援専門員の配置基準に基づく
地域別適正定員
都市部
- 推奨定員: 8-15名
- 理由: 土地制約、競争環境、個別ニーズ対応
地方部
- 推奨定員: 15-25名
- 理由: 広域サービス、効率性、人材確保
法人規模別適正定員
小規模法人
- 推奨定員: 10-20名
- 戦略: 専門特化、地域密着
中規模法人
- 推奨定員: 20-40名
- 戦略: 多機能展開、効率運営
大規模法人
- 推奨定員: 40名以上
- 戦略: 総合サービス、スケールメリット
今後の定員戦略
トレンド予測
- 小規模化: 個別対応重視の流れ継続
- 専門化: 特定ニーズ対応の専門事業所増加
- 効率化: ICT活用による運営効率化
- 連携: 事業所間連携による相乗効果
推奨戦略
- 適正規模: 地域・サービス特性に応じた適正定員
- 品質重視: 定員よりも品質による差別化
- 効率運営: 無駄のない効率的な運営体制
- 柔軟対応: 利用者ニーズに応じた柔軟な定員設定
本分析は2022年9月時点のデータに基づき、定員設定と運営効率の関係を分析しています。実際の定員設定時は地域の需要動向と競合状況を詳細に調査することをお勧めします。