障害福祉サービス市場概況分析（2023年9月版）
概要
本分析は、2023年9月時点のWAM（独立行政法人福祉医療機構）データに基づき、日本全国の障害福祉サービス市場の全体像を詳細に分析したものです。2023年3月データとの比較分析により、市場の成長動向と構造変化を明らかにします。
市場規模の概況
全体統計
2023年9月時点
- 総施設数: 165,442施設（前回比+5,662施設、+3.5%成長）
- 総定員数: 1,127,119名（前回比+40,739名、+3.7%成長）
- サービス種別: 29種類（変更なし）
- 対象地域: 全国47都道府県
成長トレンド分析
6ヶ月間（2023年3月→2023年9月）での成長実績：
- 月平均成長率: 0.58%
- 年間成長率: 約7.0%（推定）
- 新規施設開設: 月平均943施設
この成長率は、前半期（2022年9月→2023年3月）の月平均0.4%から若干加速しており、市場成長が再び活性化していることを示しています。特に児童系サービスと就労関連サービスが市場拡大を牽引しています。
サービス構成分析
主要サービス別構成比（2023年9月）
- 居宅介護: 21,415施設（12.9%）【前回比+443施設、+2.1%成長】
- 放課後等デイサービス: 18,063施設（10.9%）【前回比+1,059施設、+6.2%成長】
- 就労継続支援B型: 15,314施設（9.3%）【前回比+661施設、+4.5%成長】
- 生活介護: 11,399施設（6.9%）【前回比+316施設、+2.9%成長】
- 児童発達支援: 11,391施設（6.9%）【前回比+880施設、+8.4%成長】
特筆すべき点として、児童発達支援と放課後等デイサービスの成長率がそれぞれ8.4%、6.2%と高く、児童系サービスが引き続き市場拡大の主要因となっています。
サービスカテゴリー別分析
2023年9月時点のカテゴリー別割合
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通所・日中活動系サービス: 64,563施設（39.0%）
- 総定員数: 676,697名
- 代表的サービス: 生活介護、放課後等デイサービス、就労継続支援B型
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訪問系サービス: 49,782施設（30.1%）
- 代表的サービス: 居宅介護、重度訪問介護、同行援護
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相談・支援系サービス: 26,023施設（15.7%）
- 代表的サービス: 計画相談支援、障害児相談支援、就労定着支援
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居住・入所系サービス: 25,074施設（15.2%）
- 総定員数: 450,422名
- 代表的サービス: 施設入所支援、共同生活援助、福祉型障害児入所施設
事業者分析
法人形態別の市場構成
2023年9月時点の運営法人タイプ
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株式会社: 55,226施設（33.4%）
- 平均定員: 4.4名（小規模施設が多い）
- 主な提供サービス: 放課後等デイサービス、居宅介護
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社会福祉法人: 50,924施設（30.8%）
- 平均定員: 11.0名（中・大規模施設が多い）
- 主な提供サービス: 生活介護、施設入所支援
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NPO法人: 18,594施設（11.2%）
- 平均定員: 5.9名（中小規模）
- 主な提供サービス: 就労継続支援B型、放課後等デイサービス
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その他: 40,698施設（24.6%）
- 医療法人、自治体運営、一般社団法人など
- 平均定員: 5.3名
市場環境の変化と今後の動向
市場の主要動向
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児童系サービスの継続的成長
- 放課後等デイサービス、児童発達支援が高い成長率を維持
- 児童系は前期比で約7.0%の成長率
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就労支援サービスの安定的需要
- 就労継続支援B型の着実な成長（+4.5%）
- 就労定着支援の需要拡大（+6.1%）
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訪問系サービスの成長鈍化
- 居宅介護（+2.1%）、重度訪問介護（+1.8%）と成長率が低下
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地域差の拡大
- 都市部と地方部でのサービス普及率の格差が継続
今後の見通し
今後の6ヶ月間（2023年9月〜2024年3月）は、以下の傾向が予想されます：
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デジタル対応の進展
- ICT活用やオンラインサービスの展開加速
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専門性の高度化
- 医療的ケア児や重症心身障害者へのサービス拡充
- 専門スタッフの確保・育成がさらに重要に
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サービス品質の重視
- 単なる量的拡大から質的向上への転換
- 第三者評価や情報公開の重要性増大
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地域包括ケアとの連携強化
- 高齢者福祉との連携・統合の流れ
- 地域資源との効果的な連携モデルの確立
まとめ
2023年9月時点の障害福祉サービス市場は、全体として安定的な成長を続けています。特に児童系サービスと就労支援系サービスが引き続き市場拡大を牽引しており、社会的ニーズの高まりを反映しています。一方で、成熟期に入ったサービス種別（居宅介護等）では成長率の鈍化が見られます。
事業者にとっては、単なる量的拡大よりも、専門性の向上や質の確保、効率的な運営体制の構築が重要な課題となっています。今後も利用者ニーズと政策動向を的確に捉えた事業戦略の展開が求められるでしょう。
本分析は2023年9月時点のデータに基づき、2023年3月データとの比較により市場動向を分析しています。数値は WAM公開データを基に算出しており、一部推計を含みます。