サービス動向分析（2023年9月版）

概要

本分析は、2023年9月時点の障害福祉サービス事業所データから、29種類のサービス別動向を詳細に分析したものです。2023年3月データとの比較により、各サービスの成長性、市場成熟度、今後の展望を事業者の視点から検証します。

サービス別成長率ランキング

高成長サービス（成長率5%以上）

安定成長サービス（成長率2-5%）

安定維持サービス（成長率0-2%）

減少サービス

サービスカテゴリー別分析

通所・日中活動系サービスの動向

総施設数: 64,563施設（全体の39.0%）
成長率: +4.9%（前回比+3,018施設）

主要サービスの動向:

• 放課後等デイサービス: 18,063施設（+6.2%）

  • 需要の継続的拡大
  • 都市部での競争激化と郊外での成長
  • 高品質・専門特化型のサービス台頭

• 就労継続支援B型: 15,314施設（+4.5%）

  • 幅広い障害特性に対応する汎用性の高さ
  • 地域産業との連携による工賃向上の動き
  • 新たな作業種目の開拓・特産品開発

• 生活介護: 11,399施設（+2.9%）

  • 重度障害者向けサービスの安定需要
  • 医療的ケア対応施設の需要増
  • 高齢障害者対応型の展開

• 児童発達支援: 11,391施設（+8.4%）

  • 未就学児向けサービスの堅調な成長
  • 発達障害に特化したプログラムの充実
  • 医療的ケア対応型施設の需要増

市場特性と今後の展望:

• 成熟度: サービスにより差異（児童系：成長期、就労系：成熟期）
• 競争状況: 児童系での競争激化、特化型の優位性拡大
• 今後の方向性: 専門特化と質の向上、地域連携の強化

訪問系サービスの動向

総施設数: 49,782施設（全体の30.1%）
成長率: +1.8%（前回比+905施設）

主要サービスの動向:

• 居宅介護: 21,415施設（+2.1%）

  • 成熟市場での安定成長
  • 有資格者確保の課題継続
  • 地域密着型小規模事業所が主流

• 重度訪問介護: 18,573施設（+1.8%）

  • 長時間サービスの需要安定
  • 医療的ケア対応への移行
  • 人材確保・育成が最大の課題

• 同行援護: 7,118施設（+0.5%）

  • 視覚障害者支援の専門化
  • 低成長ながら安定した需要
  • 同行スタッフの専門性向上が課題

• 保育所等訪問支援: 2,195施設（+9.4%）

  • インクルージョン教育の進展に伴う急成長
  • 施設間連携型モデルの展開
  • 専門スタッフ確保が成長のカギ

市場特性と今後の展望:

• 成熟度: 成熟期（地域による差異小）
• 競争状況: 事業者数の増加鈍化、差別化による競争
• 今後の方向性: 専門性強化、ICT活用による業務効率化

居住・入所系サービスの動向

総施設数: 25,074施設（全体の15.2%）
成長率: +2.3%（前回比+578施設）

主要サービスの動向:

• 共同生活援助: 11,879施設（+4.8%）

  • グループホームの需要継続
  • 重度者対応型の需要増加
  • 地域偏在（都市部での不足）

• 施設入所支援: 2,513施設（+0.2%）

  • 新設は限定的、既存施設の機能強化
  • 地域移行との両立
  • セーフティネット機能の重視

• 自立生活援助: 364施設（+7.1%）

  • 地域移行の促進に伴う需要拡大
  • 単身生活支援の重要性増大
  • 精神・発達障害者の地域生活支援モデルの確立

市場特性と今後の展望:

• 成熟度: 成熟期～転換期（地域移行政策の影響）
• 競争状況: 新規参入より既存事業の質向上
• 今後の方向性: 地域生活支援拠点としての機能強化

相談・支援系サービスの動向

総施設数: 26,023施設（全体の15.7%）
成長率: +3.1%（前回比+786施設）

主要サービスの動向:

• 計画相談支援: 10,286施設（+2.5%）

  • 制度の定着による安定成長
  • 専門性の向上とネットワーク構築
  • ICTを活用した効率化モデル

• 障害児相談支援: 7,282施設（+3.4%）

  • 児童系サービスの増加に伴う需要拡大
  • 学校・医療との連携強化
  • ライフステージに沿った支援の重要性

• 地域相談支援: 6,449施設（+0.8%）

  • 緩やかな成長
  • 地域生活支援の中核的役割
  • 多職種連携のハブ機能

• 就労定着支援: 1,506施設（+6.1%）

  • 高い成長率を維持
  • 一般就労後のサポート需要が増加
  • 企業との連携モデルの成功例増加

市場特性と今後の展望:

• 成熟度: 成長後期～成熟初期
• 競争状況: 地域差大、専門性による差別化
• 今後の方向性: 包括的支援体制の構築、関係機関連携の強化

サービス選択のための事業戦略視点

サービス選択の判断基準

1. 市場の成長性と将来性

   • 成長率と施設数増加の持続可能性
   • 政策動向との整合性
   • 社会的ニーズの変化予測

2. 参入障壁と経営資源

   • 人材確保の難易度
   • 初期投資の規模
   • 専門性の要求水準

3. 経営の安定性と効率性

   • 報酬体系の安定性
   • 規模の経済性
   • 複合展開の可能性

4. 地域特性との適合性

   • 地域ニーズとのマッチング
   • 競合状況の把握
   • 地域資源との連携可能性

サービス展開戦略の例

• 複合型モデル: 相談支援と直接支援の組み合わせ

  • 例: 計画相談支援＋就労系サービス
  • メリット: 利用者の獲得と継続的支援

• ライフステージ対応型: 年齢層に合わせた展開

  • 例: 児童発達支援→放課後等デイサービス→就労移行支援
  • メリット: 利用者の成長に合わせた継続利用

• 専門特化型: 特定障害や支援方法に特化

  • 例: 発達障害専門、医療的ケア対応、強度行動障害対応
  • メリット: 高度な専門性による差別化

• 地域密着型: 特定地域でのサービス網構築

  • 例: 同一地域内での多サービス展開
  • メリット: 地域内での認知度向上と連携強化

まとめ

2023年9月時点の障害福祉サービス分析から明らかになった主要動向は以下の通りです：

1. 児童系サービスの高成長継続: 前回に引き続き、児童発達支援と放課後等デイサービスが市場をけん引
2. 就労系サービスの二極化: B型・A型は安定成長、移行支援は鈍化、定着支援は高成長
3. 訪問系サービスの成熟化: 全般的に成長率が鈍化、専門性と効率化が課題に
4. 相談系サービスの重要性増大: 複雑化するニーズに対応するコーディネート機能の価値向上

事業者にとっては、単にサービス種別の成長性だけでなく、専門性の向上、効率的な運営、地域特性に合わせた展開、複合的なサービス提供など、総合的な戦略検討が重要です。特に、人材確保・育成と質の高いサービス提供の両立が、今後の事業成功の鍵となるでしょう。

本分析は2023年9月時点のデータに基づき、各サービスの成長動向と事業機会を分析しています。サービス選択時は地域特性と競合状況も合わせてご検討ください。