地域別市場分析（2023年9月版）

概要

本分析は、2023年9月時点の障害福祉サービス事業所データを基に、都道府県別・地域別の市場特性と成長動向を詳細に分析したものです。2023年3月データとの比較も交え、全国165,442施設の地域分布と特性から、事業者にとって有用な地域戦略の示唆を提供します。

都道府県別市場規模分析

上位都道府県の市場概況（2023年9月）

成長率上位地域の特徴

愛知県（成長率4.3%）

• 成長要因: 名古屋市を中心とした都市圏での児童系サービスの拡充
• 主要成長サービス: 児童発達支援、放課後等デイサービス、就労継続支援B型
• 事業機会: 尾張・三河地域でのサービス空白地帯への展開

大阪府（成長率3.7%）

• 成長要因: 児童系サービスの継続的成長と就労支援系の拡大
• 特徴: 府内全域での事業所数の増加
• 事業機会: 北摂・泉州地域での需要拡大

神奈川県（成長率3.6%）

• 成長要因: 横浜・川崎エリアでの児童系サービスと就労支援の需要拡大
• 特徴: 県央・湘南エリアでの事業所増加
• 事業機会: 高齢化が進む郊外エリアでの複合型サービス展開

地域別市場特性分析

都市圏と地方部の比較

2023年9月時点での都市圏（首都圏・関西圏・中部圏）と地方部の比較：

都市圏の特徴

• 高い施設集中度: 人口密度の高さを反映した施設集中
• 競争の激化: 事業者間の競争が激しく、差別化が重要
• 専門性の高度化: 特化型・専門型サービスの台頭
• 連携モデルの発展: 医療・教育機関との連携が進展

地方部の特徴

• 人口あたり施設数の多さ: 都市圏を上回る人口あたり施設数
• サービス多様性の課題: 専門的サービスの選択肢が限定的
• 施設の小規模化: 平均定員が都市部より小さい傾向
• 移動支援の重要性: 広域をカバーする移動支援の需要

地域別サービス傾向の特徴

大都市圏（東京・大阪・名古屋）

• 児童系サービスの飽和傾向: 競争が激化し、品質差別化が必須
• 専門特化型の台頭: 医療的ケア、発達障害専門、就労特化型などの専門サービスが増加
• 法人形態: 株式会社比率が高い（38.5%）

地方中核都市（県庁所在地等）

• バランスのとれたサービス構成: 児童系・就労系・相談系の均衡した分布
• 成長余地: 専門サービスの展開余地が残存
• 法人形態: 社会福祉法人とNPOの比率が比較的高い（合計45.1%）

郊外・中小都市

• 児童系サービスの成長: 放課後等デイサービスの需要拡大
• 就労系サービスの安定需要: 地域産業との連携による就労継続支援の展開
• 法人形態: 多様な運営主体（個人事業主比率も相対的に高い）

過疎地域

• サービス空白地域: 特定サービスの未提供エリアが存在
• 複合型サービス: 多機能型事業所の重要性
• 法人形態: 社会福祉法人・自治体運営の比率が高い（合計52.3%）

地域別成長機会分析

サービス普及率からみた地域機会

高成長可能性地域

• 南関東周辺部: 千葉県北西部、埼玉県南部、茨城県南部

  • 特徴: 首都圏のベッドタウンで児童系サービス需要増加
  • 推奨サービス: 児童発達支援、放課後等デイサービス

• 中京圏周辺部: 三重県北部、岐阜県南部

  • 特徴: 名古屋都市圏の拡大に伴う需要増
  • 推奨サービス: 就労継続支援、児童系サービス

• 関西圏周辺部: 兵庫県東部、奈良県北部

  • 特徴: 大阪都市圏の拡大による需要増
  • 推奨サービス: 相談支援、就労移行支援

安定成長地域

• 地方中核都市: 仙台市、広島市、福岡市など

  • 特徴: 安定した需要と適度な競争環境
  • 推奨サービス: 専門特化型サービス、質の高い生活介護

• 地方政令市周辺: 静岡県、新潟県、岡山県の中核都市

  • 特徴: 未開拓の需要と市場余地
  • 推奨サービス: 複合型施設、地域連携型サービス

潜在需要地域

• 観光地域: 長野県、沖縄県など

  • 特徴: 移住者増加による新たな需要
  • 推奨サービス: 共同生活援助、就労継続支援

• 地方都市: 山梨県、島根県など

  • 特徴: 競合が少なく、地域に根ざしたサービス需要
  • 推奨サービス: 地域密着型の小規模多機能施設

地域選定のための戦略的視点

事業展開のための地域選定基準

1. 競合状況の分析

   • 同一サービス事業所の密度
   • サービス品質と差別化要素

2. 需給バランスの確認

   • 人口あたり施設数
   • 待機状況の確認

3. 地域特性の把握

   • 人口動態（年少人口比率、高齢化率）
   • 地域産業構造（就労先確保の可能性）

4. 自治体の姿勢

   • 障害福祉計画の内容
   • 独自支援策の有無

地域別展開戦略の例

• 大都市圏戦略: 専門性の高度化、ICT活用による効率化
• 地方中核都市戦略: 複合的サービス提供、幅広いニーズへの対応
• 郊外・中小都市戦略: 地域資源との連携、移動支援の充実
• 過疎地域戦略: 多機能型施設、遠隔サービスの活用

まとめ

2023年9月時点の地域別市場分析から、以下の点が明らかになりました：

1. 地域間格差の継続: 都市圏と地方部でのサービス提供状況に依然として格差
2. 児童系サービスの継続的成長: 全国的に児童系サービスの需要が拡大中
3. 地域特性に応じた戦略の重要性: 画一的なサービス展開より地域ニーズに適合した戦略が成功の鍵
4. 地方部の成長率の高さ: 前回比で地方部の成長率が都市圏を上回る傾向

事業者にとっては、単にサービス種別の選定だけでなく、地域特性を深く理解し、地域ニーズに合致したサービス展開が重要です。特に、人口動態や産業構造、交通アクセスなど、地域固有の環境要因を考慮した戦略立案が求められます。

本分析は2023年9月時点のデータに基づき、地域別の市場特性と成長機会を分析しています。参入検討時は最新の地域情報と競合状況の確認をお勧めします。