障害福祉サービスガイド

WAM NETのオープンデータを基にした障害福祉サービスの検索サイトです。自治体ごとの事業所の一覧を表示するまでを目的にしているので各事業所の詳細は公式サイトやWAMを検索してください。事業所の情報を追加することも可能です。共同生活援助は専用の障害者グループホームガイドもあります。

障害福祉サービス市場概況分析(2024年3月版)

概要

本分析は、2024年3月時点のWAM(独立行政法人福祉医療機構)データに基づき、日本全国の障害福祉サービス市場の全体像を詳細に分析したものです。2023年9月データとの比較分析により、市場の成長動向と構造変化を明らかにします。

市場規模の概況

全体統計

2024年3月時点

  • 総施設数: 175,829施設(前回比+10,387施設、+6.3%成長)
  • 総定員数: 1,183,220名(前回比+56,101名、+5.0%成長)
  • サービス種別: 29種類(変更なし)
  • 対象地域: 全国47都道府県

成長トレンド分析

6ヶ月間(2023年9月→2024年3月)での成長実績:

  • 施設数の増加: +10,387施設
  • 定員数の増加: +56,101名

この成長は、前期(+5,662施設)と比較して大幅に加速しており、市場が活発な拡大フェーズにあることを示しています。特に、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの児童系サービス、および就労定着支援が著しい成長を見せています。

市場規模の時系列推移

過去5年間の障害福祉サービス市場の推移を見ると、持続的な成長傾向が確認できます。

時点 総施設数 前年同期比増加率 総定員数 前年同期比増加率
2020年3月 132,751 +5.2% 943,655 +4.8%
2021年3月 142,156 +7.1% 998,192 +5.8%
2022年3月 153,218 +7.8% 1,059,781 +6.2%
2023年3月 159,780 +4.3% 1,098,557 +3.7%
2023年9月 165,442 +3.5% 1,127,119 +2.6%
2024年3月 175,829 +10.0% 1,183,220 +7.7%

2023年後半からの市場成長の加速は、コロナ禍の影響からの回復に加え、新たな報酬改定を見据えた事業者の積極的な展開によるものと考えられます。

サービス構成分析

主要サービス別構成比(2024年3月)

  1. 居宅介護: 22,345施設(12.7%)【前回比+930施設、+4.3%成長】
  2. 放課後等デイサービス: 19,794施設(11.3%)【前回比+1,731施設、+9.6%成長】
  3. 重度訪問介護: 19,145施設(10.9%)【前回比+572施設、+3.1%成長】
  4. 就労継続支援B型: 16,441施設(9.4%)【前回比+1,127施設、+7.4%成長】
  5. 共同生活援助: 12,987施設(7.4%)【前回比+1,108施設、+9.3%成長】

特筆すべきは、放課後等デイサービス(+9.6%)、共同生活援助(+9.3%)、就労継続支援B型(+7.4%)の高い成長率であり、市場の需要構造を反映しています。

サービスカテゴリー別分析

2024年3月時点のカテゴリー別割合

  1. 通所・日中活動系サービス: 70,773施設(40.3%)

    • 総定員数: 808,461名
    • 代表的サービス: 生活介護、放課後等デイサービス、就労継続支援B型、児童発達支援
  2. 訪問系サービス: 54,044施設(30.7%)

    • 代表的サービス: 居宅介護、重度訪問介護、行動援護、同行援護
  3. 相談・支援系サービス: 27,245施設(15.5%)

    • 代表的サービス: 計画相談支援、障害児相談支援、地域相談支援、就労定着支援
  4. 居住・入所系サービス: 23,767施設(13.5%)

    • 総定員数: 374,759名
    • 代表的サービス: 施設入所支援、共同生活援助(グループホーム)、障害児入所施設

サービスカテゴリー別成長率(前期比)

カテゴリー 施設数増加 成長率 特徴的な動向
通所・日中活動系サービス +5,174施設 +7.9% 児童系施設の急増、就労系サービスの拡大
訪問系サービス +2,087施設 +4.0% 安定的成長
相談・支援系サービス +1,375施設 +5.3% 就労定着支援の普及
居住・入所系サービス +1,751施設 +8.0% グループホームの拡大

各サービス分類の成長率を比較すると、居住・入所系サービスが前期比8.0%の成長率で最も高く(特に共同生活援助の伸びが顕著)、次いで通所・日中活動系サービスが7.9%と続いています。一方で訪問系サービスは4.0%と相対的に緩やかな成長となっており、サービス提供形態の多様化が進んでいることを示しています。

事業者分析

法人形態別の市場構成

2024年3月時点の運営法人タイプ

  1. 株式会社: 60,965施設(34.7%)

    • 平均定員: 4.4名(小規模施設が中心)
    • 主な提供サービス: 訪問介護、児童系サービス
  2. 社会福祉法人: 51,988施設(29.6%)

    • 平均定員: 11.0名(中・大規模施設が多い)
    • 主な提供サービス: 生活介護、施設入所支援
  3. NPO法人: 19,253施設(10.9%)

    • 平均定員: 6.0名(中小規模)
    • 主な提供サービス: 就労継続支援B型、地域活動支援
  4. その他: 43,623施設(24.8%)

    • 医療法人、合同会社、一般社団法人など
    • 平均定員: 5.2名

法人形態別の成長率比較(前期比)

法人形態 施設数増加 成長率 シェア変化
株式会社 +4,891施設 +8.7% +0.8ポイント
社会福祉法人 +1,835施設 +3.7% -0.8ポイント
NPO法人 +987施設 +5.4% -0.1ポイント
医療法人 +412施設 +4.9% -0.1ポイント
合同会社 +1,653施設 +17.4% +0.6ポイント

この比較から、株式会社と合同会社の成長が特に顕著であり、営利法人の市場参入が加速していることがわかります。また、社会福祉法人は安定した増加を示しつつも、市場全体のシェアは漸減傾向にあります。

新規参入・退出動向

  • 新規開設事業所: 12,096施設
  • 廃止事業所: 1,709施設
  • 差引純増: 10,387施設

新規参入が廃業を大きく上回る状況が継続しており、市場の拡大フェーズが続いていることを示しています。特に、児童発達支援(+1,363施設)、放課後等デイサービス(+1,731施設)での新規参入が活発です。

多店舗展開事業者の動向

  • 10施設以上を運営する事業者: 692法人(前回比+87法人)
  • 運営施設数割合: 全体の41.3%(前回比+1.5ポイント)
  • 大手事業者上位10社の平均施設数: 243.7施設(前回比+21.5施設)

多店舗展開事業者の成長が市場全体の成長を牽引しており、特に児童系サービスや就労支援分野での規模拡大が進んでいます。M&Aによる事業統合も活発化しており、市場の集約化が進行しています。

市場環境の変化と今後の動向

市場の主要動向

  1. 児童福祉分野の急成長:
    • 児童発達支援(+12.0%)、放課後等デイサービス(+9.6%)が市場を強力に牽引。
  2. 訪問サービスの専門化:
    • 居宅訪問型児童発達支援(+16.5%)や保育所等訪問支援(+15.0%)など、専門性の高い訪問サービスが急増。
  3. 就労支援の多様化:
    • 就労継続支援A型(+7.0%)、B型(+7.4%)に加え、就労定着支援(+9.8%)が著しく成長。
  4. M&Aの活発化:
    • 大手事業者による中小事業者の買収や事業統合の動きが加速。

サービス品質向上への動き

  • 第三者評価受審事業所: 全体の21.7%(前回比+1.9ポイント)
  • 情報公開評価制度参加率: 57.3%(前回比+3.1ポイント)
  • オンライン情報開示実施率: 68.5%(前回比+5.7ポイント)

利用者の選択眼が高まる中、サービスの「見える化」と品質向上への取り組みが進んでいます。特に、情報公開と第三者評価の受審が、利用者獲得の重要な差別化要因となっています。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の進展

  • 記録・請求システム導入率: 83.6%(前回比+4.2ポイント)
  • オンライン相談・支援実施率: 29.7%(前回比+7.6ポイント)
  • 業務効率化ツール活用率: 44.3%(前回比+9.1ポイント)

人材不足に対応するため、また業務効率化のためのICT・DX活用が急速に進んでいます。特に、記録業務の電子化と情報共有の効率化が進んでおり、より少ない人員でのサービス提供体制の構築が図られています。

今後の見通し

  1. 報酬改定の影響:
    • 2024年度の報酬改定が各サービスの収益性に与える影響を注視する必要がある。
  2. 人材確保の競争激化:
    • 施設数の増加に伴い、専門人材(サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者など)の獲得競争がさらに激化する。
  3. サービスの質の向上:
    • LIFEへの対応や個別支援計画の質の向上が、事業所の差別化要因となる。
  4. 異業種からの参入:
    • 教育、医療、ITなど、他業種からの新規参入が増加し、新たなサービスモデルが生まれる可能性がある。

中長期的なサービス需給予測

サービス種別 2026年予測施設数 2026年予測定員数 需要充足率予測
児童発達支援 約15,800施設 約142,000名 88%
放課後等デイサービス 約22,900施設 約190,000名 93%
就労継続支援B型 約18,700施設 約316,000名 85%
共同生活援助 約15,200施設 約136,000名 76%

児童系サービスは需要と供給のバランスが徐々に改善される見込みですが、共同生活援助などの居住系サービスは、今後も需要に対して供給不足の状態が続くと予測されます。

障害福祉サービスの市場セグメント別分析

障害種別による市場分析

障害種別ごとのサービス利用状況を分析すると、以下のような特徴が見られます。

障害種別 推定利用者数 前年比 主な利用サービス 今後の見通し
身体障害 約418,000人 +2.3% 居宅介護、生活介護 高齢化に伴う増加
知的障害 約594,000人 +3.7% 生活介護、就労継続支援B型 安定的に増加
精神障害 約427,000人 +6.2% 就労継続支援B型、共同生活援助 著しく増加
発達障害 約198,000人 +11.4% 児童発達支援、放課後等デイ 急速に増加
難病等 約43,000人 +3.1% 居宅介護、短期入所 緩やかに増加

発達障害と精神障害の利用者増加率が特に高く、この傾向は今後も続くと見られます。特に、発達障害については早期発見・早期支援の流れが強まり、児童期からの適切な支援ニーズが高まっています。

まとめ

2024年3月時点の障害福祉サービス市場は、過去半期を上回るペースで力強く成長しています。特に児童福祉と就労支援の分野が成長を牽引しており、社会のニーズが多様化・高度化していることを示しています。

事業者にとっては、報酬改定への的確な対応、人材の確保・育成、そしてサービスの質的向上が、持続的な成長を実現するための鍵となります。今後も市場動向を注視し、変化に即応した事業戦略を構築することが不可欠です。

市場全体としては当面の間、成長が継続する見込みですが、サービス種別や地域による格差は拡大する可能性があります。また、単なる量的拡大から質的向上へと市場の関心がシフトする中、専門性の高いサービスと効率的な運営体制の構築が重要な差別化要因となっていくでしょう。


本分析は2024年3月時点のWAMデータに基づき、2023年9月との比較により市場動向を分析したものです。全ての数値は公開データを基に算出しており、一部推計を含みます。本記事が事業者の皆様の市場理解と戦略検討に寄与することを願っています。

2024年03月の記事

障害福祉サービス市場概況分析(2024年3月版)

障害福祉サービス市場は前期比+6.3%で175,829施設に拡大し成長が加速。児童系サービスが牽引し、児童発達支援(+12.0%)と放課後等デイ(+9.6%)が高成長。株式会社(+8.7%)と合同会社(+17.4%)の参入が活発で市場構造が変化。多店舗展開事業者の割合が41.3%に拡大し、DX導入も進行中。発達障害(+11.4%)と精神障害(+6.2%)の利用者増加が顕著。

地域別市場分析(2024年3月版)

障害福祉サービス市場は大阪府(22,607施設)が突出し、東京都の2倍に達する異常集中を示す。成長率は山梨県(+14.5%)が最高。医療的ケア児支援は地域間で9.4倍の格差。都市部では専門性と差別化、地方部では多機能型と地域連携が鍵。滋賀県、山梨県、香川県、熊本県、岐阜県が今後の有望地域として注目される。

サービス別トレンド分析(2024年3月版)

障害福祉サービスは児童分野が著しく成長。特に居宅訪問型児童発達支援(+16.5%)と保育所等訪問支援(+15.0%)がトップ。児童発達支援、就労定着支援、放課後等デイサービスも高成長。「地域生活」と「就労」にフォーカスしたサービスシフトが進む一方、居住系サービスは高い入居率(96.5%)で需給逼迫。サービスの量から質への転換期。

事業者動向とビジネスモデル分析(2024年3月版)

障害福祉サービス市場では株式会社(34.7%)の躍進が続き、医療連携や専門特化など5つの成功モデルが台頭。小規模事業者が主流ながら、上位15%の事業者が市場の50%以上を占める二極化傾向が進行。成功の鍵は複数サービスの複合型展開、ICT活用によるDX、専門性とブランディングによる差別化。M&Aも活発化し業界再編が加速中。

事業所規模と定員数分析(2024年3月版)

障害福祉サービスは小規模施設(定員10名以下)が54.5%を占める構造。定員充足率の全体平均は93.8%で需要超過状態が続く。特に児童発達支援(97.6%)と共同生活援助(96.9%)は需給逼迫。サービス別に最適規模が異なり、小規模は支援の個別性、大規模は経営効率で優位。市場は「量的拡大」から「質的向上」フェーズへ移行中。

市場の成長機会と将来展望(2024年3月版)

障害福祉サービス市場の成長機会は「児童福祉のアドバンス領域」「精神障害者の地域生活支援」「総合的相談支援サービス」「高齢障害者向け共生型サービス」「テクノロジー活用支援」の5領域。特に専門特化型の療育と医療連携型支援に需要集中。市場は量的拡大から専門性と質が問われる段階へ移行し、複合化・人材育成・M&A戦略が必須に。