障害福祉サービスガイド

WAM NETのオープンデータを基にした障害福祉サービスの検索サイトです。自治体ごとの事業所の一覧を表示するまでを目的にしているので各事業所の詳細は公式サイトやWAMを検索してください。事業所の情報を追加することも可能です。共同生活援助は専用の障害者グループホームガイドもあります。

サービス動向分析(2024年9月版)

概要

本分析は、2024年9月時点のWAMデータに基づき、障害福祉サービス市場における各サービス種別の最新動向を分析したものです。2024年3月データとの比較を通じて、半年間でのサービス別成長率や利用者ニーズの変化を明らかにします。

サービス種別の成長分析

高成長サービス(成長率上位)

  1. 保育所等訪問支援: 前回比+20.2%

    • 施設数: 3,034施設(前回2,524施設)
    • 特徴: 地域生活への移行支援ニーズの高まり
    • 展開地域: 大都市圏を中心に全国的に増加
  2. 自立生活援助: 前回比+15.8%

    • 施設数: 455施設(前回393施設)
    • 特徴: 地域生活への移行支援ニーズの高まり
    • 展開地域: 大都市圏を中心に全国的に増加
  3. 居宅訪問型児童発達支援: 前回比+15.6%

    • 施設数: 318施設(前回275施設)
    • 特徴: 訪問型支援の重要性の認識向上
    • 関連動向: 医療的ケア児等の支援強化に伴う需要拡大
  4. 児童発達支援: 前回比+12.9%

    • 施設数: 14,402施設(前回12,754施設)
    • 特徴: 早期療育ニーズの高まり
    • 展開状況: 医療機関連携型の増加

上記の高成長サービスから見える傾向として、地域生活支援・訪問支援・児童支援の3分野で特に需要が高まっていることが確認できます。特に訪問支援系サービス(保育所等訪問支援、居宅訪問型児童発達支援)の成長が著しく、地域での包括的な支援に対するニーズの高さを示しています。

安定成長サービス(全体平均に近い成長率)

  1. 共同生活援助: 前回比+11.3%

    • 施設数: 14,457施設(前回12,987施設)
    • 特徴: グループホームの着実な増加
    • 傾向: 定員10名未満の小規模施設の増加が目立つ
  2. 就労継続支援B型: 前回比+10.4%

    • 施設数: 18,153施設(前回16,441施設)
    • 特徴: 安定した需要を維持
    • 利用者層: 幅広い障害種別・年齢層
  3. 放課後等デイサービス: 前回比+10.9%

    • 施設数: 21,944施設(前回19,794施設)
    • 特徴: 学齢期障害児支援の需要増加が継続
    • 課題: 地域格差と支援の質の均一化
  4. 就労定着支援: 前回比+9.6%

    • 施設数: 1,812施設(前回1,653施設)
    • 特徴: 就労後の職場定着支援の重要性の認識向上
    • 関連動向: 一般就労移行者の増加に伴う需要拡大

これらのサービスは市場全体の平均成長率(8.6%)に近いか、やや上回る安定した成長を示しており、障害福祉サービスの中核を担うサービスとして今後も継続的な需要が見込まれます。

低成長サービス(成長率下位)

  1. 医療型児童発達支援: 前回比-26.1%

    • 施設数: 68施設(前回92施設)
    • 特徴: 医療的ケアを要する児童向けの専門サービス
    • 課題: 医療機関との連携体制の構築の難しさ
  2. 施設入所支援: 前回比-0.0%

    • 施設数: 2,534施設(前回2,535施設)
    • 特徴: 地域移行政策の中での微減傾向
    • 利用者層: 重度障害者が中心
  3. 重度障害者等包括支援: 前回比+5.3%

    • 施設数: 20施設(前回19施設)
    • 特徴: 最も提供事業所が少ないサービス
    • 課題: 複合的なニーズに応える人材確保の難しさ

これらのサービスは市場全体と比較して成長率が低いものの、専門性の高さや対象者の特性から一定のニーズがあります。特に医療ニーズを併せ持つ重度障害者向けサービスについては、専門性の高さから参入障壁が高く、施設数の大幅な増加は見られません。医療型児童発達支援の減少は、より地域に密着したサービス形態への移行が進んでいることも要因として考えられます。

サービスカテゴリー別分析

通所・日中活動系サービスの動向

通所・日中活動系サービスは市場全体の中核を担い、特に児童向けサービスが高い成長率を示しています。

  • 児童発達支援: 前回比+12.9%(14,402施設)
  • 放課後等デイサービス: 前回比+10.9%(21,944施設)
  • 就労継続支援B型: 前回比+10.4%(18,153施設)
  • 生活介護: 前回比+5.8%(12,580施設)

特に児童向けのサービスは引き続き高い成長率を示しており、発達障害児の早期発見・早期支援の意識向上や、医療的ケア児への支援体制構築が進む中で、その重要性はさらに高まっています。一方で、提供される支援の質にばらつきがあるという課題も指摘されており、今後は量的拡大だけでなく質的向上が求められるフェーズに入っていくことが予想されます。

訪問系サービスの動向

自宅を拠点とした支援を提供する訪問系サービスは着実に成長を続けています。

  • 居宅介護: 前回比+6.6%(23,827施設)
  • 重度訪問介護: 前回比+5.6%(20,220施設)
  • 同行援護: 前回比+4.4%(7,512施設)
  • 行動援護: 前回比+8.8%(2,784施設)

訪問系サービスはコロナ禍で抑制されていた利用が回復傾向にあり、特に重度障害者の地域生活を支える基盤として重要性が再認識されています。人材確保の課題は依然として大きいものの、在宅生活を望む障害者のニーズに応えるサービスとして今後も安定した需要が見込まれます。

居住・入所系サービスの動向

住まいの場を提供する居住・入所系サービスも堅調な成長が見られます。

  • 共同生活援助: 前回比+11.3%(14,457施設)
  • 自立生活援助: 前回比+15.8%(455施設)
  • 施設入所支援: 前回比-0.0%(2,534施設)
  • 宿泊型自立訓練: 前回比+3.7%(227施設)

特に注目すべきは自立生活援助の高い成長率で、これは地域移行後の生活を支える新しいサービス形態として定着しつつあります。施設からの地域移行を推進する政策の影響もあり、地域での生活を支えるサービスへのニーズが高まっています。

相談・支援系サービスの動向

相談・支援系サービスは全体の中で最も高い成長率を示しています。

  • 就労定着支援: 前回比+9.6%(1,812施設)
  • 障害児相談支援: 前回比+9.6%(7,620施設)
  • 計画相談支援: 前回比+7.1%(16,963施設)
  • 地域移行支援: 前回比+11.7%(1,308施設)

特に就労定着支援の高い成長率は、一般就労後のフォローアップの重要性が認識されてきた表れと言えます。障害福祉サービス全体が単なる「場の提供」から「質の高い個別支援」へと重点を移す中、相談・支援系サービスの役割は今後ますます重要になると予測されます。

サービス提供形態の変化

多機能型事業所の増加

単独のサービス提供ではなく、複数のサービスを組み合わせて提供する「多機能型事業所」が増加傾向にあります。

  • 児童発達支援+放課後等デイサービス: 前回比+11.8%
  • 就労継続支援B型+生活介護: 前回比+10.2%
  • 生活介護+短期入所: 前回比+8.7%

多機能型事業所の増加は、利用者のライフステージに合わせた切れ目のないサービス提供を可能にするとともに、事業者にとっても安定した経営基盤の構築につながっています。

サービス特化型の展開

一方で、特定の障害特性やニーズに特化した専門性の高いサービス提供も増加しています。

  • 医療的ケア児支援: 前回比+16.4%
  • 強度行動障害者支援: 前回比+15.3%
  • 自閉症スペクトラム支援: 前回比+14.2%
  • 視覚障害者特化型: 前回比+11.5%

このような特化型サービスは、専門性の高さが差別化要因となり、大都市圏を中心に展開されています。

今後の展望と事業機会

成長が期待されるサービス領域

  1. 就労定着支援・自立生活援助:
    現在の高成長が今後も継続すると予測され、障害者の地域生活・就労支援の中核になることが期待されます。

  2. 専門特化型児童支援:
    児童系サービス全体の競争が激化する中で、特定の障害特性や支援ニーズに特化した専門的なサービスの需要が高まると予測されます。

  3. 短期入所(医療的ケア対応型):
    医療的ケアが必要な障害児者のレスパイトケアニーズは高く、対応可能な短期入所施設の需要は今後も増加すると考えられます。

再編が進む可能性のある領域

  1. 小規模訪問系サービス:
    人材確保の困難さから、小規模事業所の統合や連携が進む可能性があります。

  2. 利用率の低い就労継続支援B型:
    提供事業所数は多いものの、地域によっては供給過多の状態も見られ、淘汰や特化型への転換が進む可能性があります。

  3. 一般的な放課後等デイサービス:
    競争激化に伴い、差別化できない事業所は経営難に直面する可能性があります。

サービス提供における課題と対応策

人材確保・育成の課題

多くのサービスで人材確保が最大の課題となっています。特に訪問系サービスや専門性の高いサービスでは深刻な状況です。

対応策:

  • 処遇改善とキャリアパスの構築
  • ICT活用による業務効率化
  • 未経験者向け研修システムの構築

サービス質の確保

特に成長率の高い児童系サービスでは、質のばらつきが課題として指摘されています。

対応策:

  • 第三者評価の積極的な活用
  • スタッフ研修の充実
  • 専門職(作業療法士、言語聴覚士等)との連携強化

総括

2024年9月時点の障害福祉サービス市場は、全体として8.6%の成長を記録しています。サービス種別によって成長率に差があるものの、ほぼすべてのサービスで前回調査時点よりも事業所数が増加しています。

特に「相談・支援系サービス」(自立生活援助、就労定着支援)と「通所・日中活動系サービス」の児童向けサービス(放課後等デイサービス、児童発達支援)の成長が著しく、障害者の地域生活支援と子どもの発達支援に対するニーズの高まりを反映しています。

今後は全体的な量的拡大に加え、サービスの質的向上や専門特化型サービスの展開など、より多様化・高度化するニーズに応える動きが加速すると予測されます。事業者には、市場動向を踏まえた戦略的なサービス展開が求められています。


本分析は2024年9月時点のWAMデータに基づき、2024年3月との比較によりサービス種別ごとの市場動向を分析したものです。全ての数値は公開データを基に算出しており、一部推計を含みます。本記事が事業者の皆様のサービス展開や戦略立案に寄与することを願っています。

2024年09月の記事

障害福祉サービス市場概況分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場は過去最高の8.6%成長率を記録し急速に拡大。児童向けサービスの躍進が続き、訪問系サービスのニーズも強く復調。株式会社の成長率が最も高く(+10.1%)、民間企業の参入が加速。2025年3月の報酬改定を見据え引き続き市場拡大が予測されるが、サービスの質と量のバランスが今後の課題に。

地域別市場分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場は全国的に拡大する中、大阪府(+10.3%)や滋賀県(+15.1%)の高成長が顕著。上位5都道府県で全国施設数の約37%を占める一方、従来の大都市圏中心の成長が地方へも拡大。市場の成熟化に伴い、地方では複合的サービス、大都市圏では専門性強化という二極化した展開が進行中。

サービス動向分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場は全体として8.6%成長し、ほぼすべてのサービス種別で事業所数が増加。特に「相談・支援系サービス」(自立生活援助+15.8%、就労定着支援+9.6%)と「通所・日中活動系サービス」の児童向けサービス(放課後等デイ+10.9%、児童発達支援+12.9%)の成長が著しく、障害者の地域生活支援と子どもの発達支援に対するニーズの高まりを反映。

事業モデル分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場では株式会社(+12.5%)の成長率が最も高く、大規模事業者の市場シェア拡大と小規模事業者の淘汰が進行中。多店舗展開事業者が全体の43.6%まで増加し、単一サービスから複合的サービス提供への移行も進展。専門性による差別化と業務効率化のためのICT導入が成功の鍵となり、「専門性」「連携力」「効率性」「柔軟性」の4要素が重要。

定員・利用率分析(2024年9月版)

障害福祉サービスでは規模の効率化が進み、多くのサービスで平均定員が微増。都市部と地方部での定員規模に明確な差異が見られ、地域特性に応じた最適規模が異なる。児童系サービスでは競争激化による利用率低下が顕著な一方、入所系・居住系サービスは高い利用率を維持。小規模事業所は専門性による差別化、大規模事業所はスケールメリット活用が重要に。

成長機会分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場では入所系・居住系サービスの供給不足が継続する一方、児童系サービスでは地域によって競争激化。都道府県間・地域間の施設充足度の差が拡大し、医療的ケア・発達障害・強度行動障害等の専門領域でニーズが高い。今後は単純な量的拡大より特定分野への集中と専門性向上が重要となり、複合的サービス提供と関連機関連携が成功の鍵に。