障害福祉サービスガイド

WAM NETのオープンデータを基にした障害福祉サービスの検索サイトです。自治体ごとの事業所の一覧を表示するまでを目的にしているので各事業所の詳細は公式サイトやWAMを検索してください。事業所の情報を追加することも可能です。共同生活援助は専用の障害者グループホームガイドもあります。

地域別市場分析(2024年9月版)

概要

本稿では、2024年9月時点の障害福祉サービス市場を地域別に分析し、都道府県ごとの施設数分布、都市部と地方部の特徴、および今後の地域戦略の方向性について考察します。2024年3月データとの比較を通じて、地域ごとの成長動向と市場特性を明らかにします。

都道府県別 施設数ランキング

施設数が最も多い上位5都道府県は以下の通りです。

  1. 大阪府: 24,003施設(構成比 12.6%)【前回比+2,328施設、+10.3%成長】
  2. 東京都: 12,788施設(構成比 6.7%)【前回比+836施設、+7.2%成長】
  3. 愛知県: 11,517施設(構成比 6.0%)【前回比+1,096施設、+10.1%成長】
  4. 北海道: 10,926施設(構成比 5.7%)【前回比+838施設、+8.1%成長】
  5. 神奈川県: 9,877施設(構成比 5.2%)【前回比+712施設、+7.8%成長】

この上位5都道府県で、全国の施設数の約36%を占めています。大阪府の施設数は引き続き突出しており、市場シェアをさらに高めています。また、愛知県の成長率が高く、その存在感を増しています。

増加率が高い都道府県(前回比)

  1. 滋賀県: +15.1%
  2. 沖縄県: +13.8%
  3. 長野県: +12.5%
  4. 大阪府: +10.3%
  5. 愛知県: +10.1%

今期は大都市を抱える府県だけでなく、これまであまり成長が見られなかった地方県でも高い増加率を示しており、市場拡大の波が全国により均等に広がりつつあることを示しています。特に滋賀県と沖縄県の成長は注目に値します。

地域ブロック別分析

大都市圏の動向

  • 対象: 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、京都府
  • 施設数: 75,309施設(前回比+6,557施設、+9.5%成長)
  • 全国比: 39.4%(前回39.1%から微増)

大都市圏では、人口集中を背景に多様なサービスが提供されています。今期は大都市圏の全国に占める割合がやや増加しており、大都市圏での成長が復調していることを示しています。

大都市圏の特徴的なデータ

  • 人口10万人あたり施設数: 124.1施設(全国平均: 151.3施設)
  • サービス種別構成比(上位3種):
    1. 居宅介護: 13.9%(全国平均: 12.5%)
    2. 重度訪問介護: 13.8%(全国平均: 10.6%)
    3. 放課後等デイサービス: 12.3%(全国平均: 11.5%)

大都市圏では依然として人口当たりの施設数は全国平均より少ないものの、その差は縮まりつつあります。訪問系サービスの割合が高いという特性は変わらず、効率的なサービス提供が行われています。

大都市圏の市場特性

  • 競争環境: 事業所密度が高く、利用者獲得競争が激化
  • 専門化: 特定ニーズに特化した専門性の高い事業所の増加
  • 多様性: 医療的ケア児支援(+16.4%)など専門サービスの高成長継続

地方圏の動向

  • 対象: 大都市圏以外の道県
  • 施設数: 115,640施設(前回比+8,563施設、+8.0%成長)
  • 全国比: 60.6%(前回60.9%から微減)

地方圏の成長率は大都市圏を下回りましたが、依然として安定した成長を続けています。

地方圏の特徴的なデータ

  • 人口10万人あたり施設数: 171.4施設(前回比+15.2施設増)
  • サービス種別構成比(上位3種):
    1. 放課後等デイサービス: 10.9%
    2. 居宅介護: 10.8%
    3. 就労継続支援B型: 10.1%

地方圏では施設系サービスの割合が高く、特に就労継続支援B型や生活介護など定員を持つサービスの展開が顕著です。今期は特に共同生活援助(グループホーム)の成長が著しく(+9.7%)、地域生活の場の整備が進んでいます。

都市規模別分析

大都市(政令指定都市)

  • 施設数: 54,923施設(全国比28.8%)
  • 成長率: +8.2%(前回比)
  • 特性: 多様なサービス展開、専門性の高いサービスの集積
  • 注目サービス: 自立生活援助(+27.1%)、就労定着支援(+26.8%)

中核市・特例市

  • 施設数: 42,770施設(全国比22.4%)
  • 成長率: +9.3%(前回比)
  • 特性: バランスの取れたサービス展開、成長率の高さ
  • 注目サービス: 放課後等デイサービス(+11.7%)、共同生活援助(+9.8%)

その他の市町村

  • 施設数: 93,256施設(全国比48.8%)
  • 成長率: +8.7%(前回比)
  • 特性: 施設系・入所系サービスの比率が高い
  • 注目サービス: 児童発達支援(+10.9%)、短期入所(+7.8%)

中核市・特例市の成長率が最も高く、効率的な市場規模と比較的低い競争環境が新規参入を促していると考えられます。

人口動態との関連分析

人口減少地域の動向

  • 対象: 人口減少率が2%以上の道県(秋田県、青森県、高知県など)
  • 施設数増加率: +7.4%(全国平均8.6%を下回る)
  • 特徴的な動き:
    • 単独の事業所よりも、複数サービスの複合展開が増加
    • 医療機関併設型の事業所の増加
    • 定員充足率の維持が課題

人口減少地域でも施設数は増加していますが、その増加率は全国平均を下回っています。サービス提供の効率化と複合的な事業展開が進められています。

人口増加地域の動向

  • 対象: 人口増加率が0.5%以上の都府県(東京都、埼玉県、愛知県など)
  • 施設数増加率: +8.9%(全国平均を上回る)
  • 特徴的な動き:
    • 専門特化型サービスの増加
    • 児童系サービスの急速な拡大
    • 新規参入事業者の活発な市場参入

人口増加地域では、多様なニーズに応えるための専門特化型サービスが増加しています。特に児童系サービスの成長が著しく、新規参入も活発です。

地域別の市場機会

大都市圏の機会

  • 専門性強化: 特定障害や専門的ケアに特化したサービス
  • 医療連携: 医療的ケア児・者向けサービスの拡充
  • 効率化: ICT活用による業務効率化とサービス質向上

地方圏の機会

  • 複合化: 複数サービスを組み合わせた総合的支援
  • 地域連携: 地域資源との連携による付加価値創出
  • 事業承継: 継続困難な事業所の承継・再生

総括と今後の展望

2024年9月時点の地域別分析からは、以下の特徴が見えてきます:

  1. 全国的な市場拡大: すべての地域で施設数が増加しているが、その増加率には地域差がある
  2. 地方への成長拡大: これまで大都市圏中心だった成長が地方へも広がりつつある
  3. 都市規模別の特性: 政令市、中核市、その他市町村それぞれに特有のサービス展開がある
  4. 地域ニーズへの対応: 人口動態に合わせたサービス提供モデルの変化が進行中

全体としては市場の成熟化が進む中で、地域特性を踏まえた戦略的なサービス展開がより重要になっています。特に、地方における複合的サービス提供と大都市圏における専門性の強化という二極化した展開が見られ、事業者は自地域の特性を把握した上での事業展開が求められます。


本分析は2024年9月時点のWAMデータに基づき、2024年3月との比較により地域別の市場動向を分析したものです。全ての数値は公開データを基に算出しており、一部推計を含みます。本記事が事業者の皆様の地域戦略立案に寄与することを願っています。

2024年09月の記事

障害福祉サービス市場概況分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場は過去最高の8.6%成長率を記録し急速に拡大。児童向けサービスの躍進が続き、訪問系サービスのニーズも強く復調。株式会社の成長率が最も高く(+10.1%)、民間企業の参入が加速。2025年3月の報酬改定を見据え引き続き市場拡大が予測されるが、サービスの質と量のバランスが今後の課題に。

地域別市場分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場は全国的に拡大する中、大阪府(+10.3%)や滋賀県(+15.1%)の高成長が顕著。上位5都道府県で全国施設数の約37%を占める一方、従来の大都市圏中心の成長が地方へも拡大。市場の成熟化に伴い、地方では複合的サービス、大都市圏では専門性強化という二極化した展開が進行中。

サービス動向分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場は全体として8.6%成長し、ほぼすべてのサービス種別で事業所数が増加。特に「相談・支援系サービス」(自立生活援助+15.8%、就労定着支援+9.6%)と「通所・日中活動系サービス」の児童向けサービス(放課後等デイ+10.9%、児童発達支援+12.9%)の成長が著しく、障害者の地域生活支援と子どもの発達支援に対するニーズの高まりを反映。

事業モデル分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場では株式会社(+12.5%)の成長率が最も高く、大規模事業者の市場シェア拡大と小規模事業者の淘汰が進行中。多店舗展開事業者が全体の43.6%まで増加し、単一サービスから複合的サービス提供への移行も進展。専門性による差別化と業務効率化のためのICT導入が成功の鍵となり、「専門性」「連携力」「効率性」「柔軟性」の4要素が重要。

定員・利用率分析(2024年9月版)

障害福祉サービスでは規模の効率化が進み、多くのサービスで平均定員が微増。都市部と地方部での定員規模に明確な差異が見られ、地域特性に応じた最適規模が異なる。児童系サービスでは競争激化による利用率低下が顕著な一方、入所系・居住系サービスは高い利用率を維持。小規模事業所は専門性による差別化、大規模事業所はスケールメリット活用が重要に。

成長機会分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場では入所系・居住系サービスの供給不足が継続する一方、児童系サービスでは地域によって競争激化。都道府県間・地域間の施設充足度の差が拡大し、医療的ケア・発達障害・強度行動障害等の専門領域でニーズが高い。今後は単純な量的拡大より特定分野への集中と専門性向上が重要となり、複合的サービス提供と関連機関連携が成功の鍵に。