障害福祉サービスガイド

WAM NETのオープンデータを基にした障害福祉サービスの検索サイトです。自治体ごとの事業所の一覧を表示するまでを目的にしているので各事業所の詳細は公式サイトやWAMを検索してください。事業所の情報を追加することも可能です。共同生活援助は専用の障害者グループホームガイドもあります。

障害福祉サービス市場概況分析(2024年9月版)

概要

本分析は、2024年9月時点のWAM(独立行政法人福祉医療機構)データに基づき、日本全国の障害福祉サービス市場の全体像を詳細に分析したものです。2024年3月データとの比較分析により、市場の成長動向と構造変化を明らかにします。

市場規模の概況

全体統計

2024年9月時点

  • 総施設数: 190,949施設(前回比+15,120施設、+8.6%成長)
  • 総定員数: 1,287,113名(前回比+103,893名、+8.8%成長)
  • サービス種別: 29種類(変更なし)
  • 対象地域: 全国47都道府県

成長トレンド分析

6ヶ月間(2024年3月→2024年9月)での成長実績:

  • 施設数の増加: +15,120施設
  • 定員数の増加: +103,893名

この成長は、前期(+10,387施設、+6.3%成長)と比較してさらに加速しており、市場が非常に活発な拡大フェーズに入っていることを示しています。特に注目すべきは定員数の増加が大幅に拡大していることで、これは施設の大規模化が進んでいることを示唆しています。

市場規模の時系列推移

過去5年間の障害福祉サービス市場の推移を見ると、持続的な成長傾向が確認できます。

時点 総施設数 前期比増加率 総定員数 前期比増加率
2021年3月 142,156 +7.1% 998,192 +5.8%
2022年3月 153,218 +7.8% 1,059,781 +6.2%
2023年3月 159,780 +4.3% 1,098,557 +3.7%
2023年9月 165,442 +3.5% 1,127,119 +2.6%
2024年3月 175,829 +6.3% 1,183,220 +5.0%
2024年9月 190,949 +8.6% 1,287,113 +8.8%

2023年後半から加速した市場成長がさらに勢いを増しており、コロナ禍からの完全回復と新たな支援策の影響による事業者の積極的展開が続いています。特に2024年3月から9月期は、この5年間で最も高い成長率を記録しました。

サービス構成分析

主要サービス別構成比(2024年9月)

  1. 居宅介護: 23,827施設(12.5%)【前回比+1,482施設、+6.6%成長】
  2. 重度訪問介護: 20,220施設(10.6%)【前回比+1,075施設、+5.6%成長】
  3. 放課後等デイサービス: 21,944施設(11.5%)【前回比+2,150施設、+10.9%成長】
  4. 就労継続支援B型: 18,153施設(9.5%)【前回比+1,712施設、+10.4%成長】
  5. 共同生活援助: 14,457施設(7.6%)【前回比+1,470施設、+11.3%成長】

特筆すべきは放課後等デイサービスが重度訪問介護を上回り第2位となったことで、児童向けサービスの需要が急速に高まっていることを示しています。また、すべての主要サービスで前期を上回る成長率を記録しています。

サービスカテゴリー別分析

2024年9月時点のカテゴリー別割合

  1. 通所・日中活動系サービス: 85,539施設(44.8%)

    • 総定員数: 1,135,554名
    • 代表的サービス: 生活介護、放課後等デイサービス、就労継続支援B型
  2. 訪問系サービス: 57,715施設(30.2%)

    • 代表的サービス: 居宅介護、重度訪問介護、同行援護
  3. 居住・入所系サービス: 18,134施設(9.5%)

    • 総定員数: 151,559名
    • 代表的サービス: 施設入所支援、共同生活援助、宿泊型自立訓練
  4. 相談・支援系サービス: 29,561施設(15.5%)

    • 代表的サービス: 計画相談支援、障害児相談支援、地域移行支援

サービスカテゴリー別成長率(前期比)

カテゴリー 施設数増加 成長率 特徴的な動向
通所・日中活動系サービス +7,258施設 +9.3% 児童系施設の継続的急増
訪問系サービス +3,652施設 +6.8% 訪問系全体の需要拡大
居住・入所系サービス +1,547施設 +9.3% 共同生活援助の拡大
相談・支援系サービス +2,663施設 +9.9% 障害児相談支援と就労定着支援の増加

注目すべきは相談・支援系サービスの成長率が最も高いことで、特に就労定着支援や障害児相談支援のニーズが高まっていることを示しています。また、居住・入所系サービスも予想以上の成長を見せており、特に共同生活援助(グループホーム)の需要増加が目立っています。

事業者分析

法人形態別の市場構成

2024年9月時点の運営法人タイプ

  1. 株式会社: 68,589施設(35.9%)

    • 平均定員: 4.6名(小規模施設中心)
    • 前回比: +7,624施設(+12.5%成長)
    • 主な提供サービス: 訪問介護、児童系サービス
  2. 社会福祉法人: 53,334施設(27.9%)

    • 平均定員: 11.0名(中・大規模施設)
    • 前回比: +1,346施設(+2.6%成長)
    • 主な提供サービス: 生活介護、施設入所支援
  3. NPO法人: 20,792施設(10.9%)

    • 平均定員: 6.2名(中小規模)
    • 前回比: +1,539施設(+8.0%成長)
    • 主な提供サービス: 就労継続支援B型、地域活動支援
  4. その他: 47,522施設(24.9%)

    • 医療法人、合同会社、一般社団法人など
    • 平均定員: 5.5名
    • 前回比: +3,899施設(+8.9%成長)

株式会社の成長率が最も高く、民間企業の市場参入が引き続き加速していることがわかります。一方、社会福祉法人は安定した成長を続けながら、大規模施設運営の中心的役割を担っています。

総括と今後の見通し

2024年9月時点の障害福祉サービス市場は、過去最高の成長率を記録し、非常に活発な拡大を続けています。特に以下の点が注目されます:

  1. 市場の急速な拡大: 前期を上回る8.6%の成長率は、需要の高まりと事業者の積極的な参入を示しています

  2. 児童向けサービスの躍進: 放課後等デイサービスの急成長が続き、サービス全体の中でも存在感を増しています

  3. 訪問系サービスの需要回復: コロナ禍で抑制されていた訪問サービスへのニーズが強く復調しています

  4. 支援系サービスの確立: 就労定着支援を中心に、新たな支援形態が市場で確固たる地位を築きつつあります

2025年3月に予定されている報酬改定を見据え、今後も事業者の新規参入や既存事業所の拡充が続くと予測されます。一方で、サービスの質の確保や人材確保の課題も顕在化しており、持続可能な市場発展のためには質と量のバランスが重要となるでしょう。


本分析は2024年9月時点のWAMデータに基づき、2024年3月との比較により市場動向を分析したものです。全ての数値は公開データを基に算出しており、一部推計を含みます。本記事が事業者の皆様の市場理解と戦略検討に寄与することを願っています。

2024年09月の記事

障害福祉サービス市場概況分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場は過去最高の8.6%成長率を記録し急速に拡大。児童向けサービスの躍進が続き、訪問系サービスのニーズも強く復調。株式会社の成長率が最も高く(+10.1%)、民間企業の参入が加速。2025年3月の報酬改定を見据え引き続き市場拡大が予測されるが、サービスの質と量のバランスが今後の課題に。

地域別市場分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場は全国的に拡大する中、大阪府(+10.3%)や滋賀県(+15.1%)の高成長が顕著。上位5都道府県で全国施設数の約37%を占める一方、従来の大都市圏中心の成長が地方へも拡大。市場の成熟化に伴い、地方では複合的サービス、大都市圏では専門性強化という二極化した展開が進行中。

サービス動向分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場は全体として8.6%成長し、ほぼすべてのサービス種別で事業所数が増加。特に「相談・支援系サービス」(自立生活援助+15.8%、就労定着支援+9.6%)と「通所・日中活動系サービス」の児童向けサービス(放課後等デイ+10.9%、児童発達支援+12.9%)の成長が著しく、障害者の地域生活支援と子どもの発達支援に対するニーズの高まりを反映。

事業モデル分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場では株式会社(+12.5%)の成長率が最も高く、大規模事業者の市場シェア拡大と小規模事業者の淘汰が進行中。多店舗展開事業者が全体の43.6%まで増加し、単一サービスから複合的サービス提供への移行も進展。専門性による差別化と業務効率化のためのICT導入が成功の鍵となり、「専門性」「連携力」「効率性」「柔軟性」の4要素が重要。

定員・利用率分析(2024年9月版)

障害福祉サービスでは規模の効率化が進み、多くのサービスで平均定員が微増。都市部と地方部での定員規模に明確な差異が見られ、地域特性に応じた最適規模が異なる。児童系サービスでは競争激化による利用率低下が顕著な一方、入所系・居住系サービスは高い利用率を維持。小規模事業所は専門性による差別化、大規模事業所はスケールメリット活用が重要に。

成長機会分析(2024年9月版)

障害福祉サービス市場では入所系・居住系サービスの供給不足が継続する一方、児童系サービスでは地域によって競争激化。都道府県間・地域間の施設充足度の差が拡大し、医療的ケア・発達障害・強度行動障害等の専門領域でニーズが高い。今後は単純な量的拡大より特定分野への集中と専門性向上が重要となり、複合的サービス提供と関連機関連携が成功の鍵に。