障害福祉サービスガイド

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障害福祉サービス市場概況分析(2025年3月版)

概要

本分析は、2025年3月時点のWAM(独立行政法人福祉医療機構)データに基づき、日本全国の障害福祉サービス市場の全体像を詳細に分析したものです。2024年9月データとの比較分析に加えて、2021年11月からの長期トレンドを含めて市場の成長動向と構造変化を明らかにします。

市場規模の概況

全体統計

2025年3月時点

  • 総施設数: 197,708施設(前回比+6,759施設、+3.5%成長)
  • 総定員数: 1,329,969名(前回比+42,856名、+3.3%成長)
  • サービス種別: 29種類(変更なし)
  • 対象地域: 全国47都道府県

成長トレンド分析

6ヶ月間(2024年9月→2025年3月)での成長実績:

  • 施設数の増加: +6,759施設
  • 定員数の増加: +42,856名

この成長率は前期(+15,120施設、+8.6%成長)と比較して大幅に鈍化しており、市場の成長速度が落ち着いてきた兆候が見られます。2023年後半から2024年にかけての高い成長率が平準化し、より持続可能なペースに移行していると考えられます。

市場規模の長期時系列推移

過去3年半の障害福祉サービス市場の推移を見ると、以下のような変動が確認できます。

障害福祉サービス市場の施設数推移

時点 総施設数 前期比増加率 総定員数 前期比増加率
2021年11月 145,937 - 1,006,468 -
2022年3月 149,540 +2.5% 1,023,194 +1.7%
2022年9月 155,972 +4.3% 1,067,383 +4.3%
2023年3月 159,780 +2.4% 1,086,380 +1.8%
2023年9月 165,442 +3.5% 1,127,119 +3.7%
2024年3月 175,829 +6.3% 1,183,220 +5.0%
2024年9月 190,949 +8.6% 1,287,113 +8.8%
2025年3月 197,708 +3.5% 1,329,969 +3.3%

障害福祉サービス総定員数の推移

この推移から、市場は2021年から2023年前半までは比較的緩やかな成長を続けていましたが、2023年後半から2024年にかけて急速に成長が加速し、2025年に入って再び安定した成長ペースに戻りつつあるという周期的な変動が見て取れます。2021年11月から2025年3月までの3年4ヶ月で、総施設数は約5.2万施設増加(+35.5%)し、平均して年間約10%の成長率を維持しています。

施設数と定員数の関係

定員を持つサービスの平均定員数は以下のように推移しています:

  • 2021年11月:15.1名/施設
  • 2023年3月:15.1名/施設
  • 2024年3月:14.8名/施設
  • 2024年9月:14.6名/施設
  • 2025年3月:14.5名/施設

全体として、一施設あたりの平均定員数は緩やかに減少傾向にあり、小規模・専門特化型の事業所展開が増えていることが背景にあると考えられます。特に近年は定員のない訪問系・相談系サービスの増加が影響しています。

サービス構成分析

主要サービス別構成比(2025年3月)

  1. 居宅介護: 24,448施設(12.4%)【前回比+621施設、+2.6%成長】
  2. 放課後等デイサービス: 23,031施設(11.6%)【前回比+1,087施設、+5.0%成長】
  3. 重度訪問介護: 20,611施設(10.4%)【前回比+391施設、+1.9%成長】
  4. 就労継続支援B型: 19,034施設(9.6%)【前回比+881施設、+4.9%成長】
  5. 共同生活援助: 15,060施設(7.6%)【前回比+603施設、+4.2%成長】

上位5サービスの施設数比較(2025年3月)

前回と比較して、上位5サービスの順位に若干の変化が見られます。放課後等デイサービスが重度訪問介護を抜いて第2位となっており、児童向けサービスの需要が引き続き強いことを示しています。また、上位サービスの成長率は1.8%~5.0%と市場全体の成長率(3.5%)に近いか下回っており、これは市場の成熟化と新興サービスへの注目の高まりを示唆しています。

サービス別成長率ランキング

成長率の高いサービス(前回比)

  1. 自立生活援助: +9.5%(1,049施設、前回958施設)
  2. 就労定着支援: +9.1%(1,754施設、前回1,608施設)
  3. 障害児相談支援: +7.8%(8,214施設、前回7,620施設)
  4. 計画相談支援: +7.1%(12,792施設、前回11,947施設)
  5. 保育所等訪問支援: +6.7%(1,875施設、前回1,758施設)

成長率の高い上位5サービス(2024年9月→2025年3月、%)

継続的に高い成長を示しているのが、自立生活援助と就労定着支援という「支援系サービス」と、障害児相談支援や計画相談支援という「相談系サービス」です。これは地域での自立生活を推進する政策方針と、生活全般のマネジメントを重視する傾向の表れと考えられます。

成長率の低いサービス(前回比)

  1. 重度障害者等包括支援: +0.0%(20施設、変化なし)
  2. 療養介護: +0.8%(263施設、前回261施設)
  3. 施設入所支援: +1.1%(2,780施設、前回2,749施設)
  4. 就労継続支援B型: +1.8%(19,034施設、前回18,153施設)
  5. 生活介護: +2.0%(12,828施設、前回12,580施設)

入所系サービスや医療的ケアを伴うサービスは成長率が低く、地域移行・地域生活支援の政策方針が反映されています。また、就労継続支援B型の成長率低下は、市場の成熟化と供給過多の地域が出てきていることを示唆しています。

サービスカテゴリー別分析

2025年3月時点のカテゴリー別割合

サービスカテゴリー別施設数(2025年3月)

円グラフのセグメントにカーソルを合わせると詳細が表示されます
  1. 通所・日中活動系サービス: 79,644施設(40.3%)

    • 総定員数: 812,710名
    • 代表的サービス: 生活介護、放課後等デイサービス、就労継続支援B型
  2. 訪問系サービス: 55,640施設(28.1%)

    • 代表的サービス: 居宅介護、重度訪問介護、同行援護
  3. 居住・入所系サービス: 18,311施設(9.3%)

    • 総定員数: 331,609名
    • 代表的サービス: 施設入所支援、共同生活援助、福祉型障害児入所施設
  4. 相談・支援系サービス: 44,113施設(22.3%)

    • 代表的サービス: 計画相談支援、障害児相談支援、就労定着支援

サービスカテゴリー別成長率(前期比)

カテゴリー 施設数増加 成長率 特徴的な動向
通所・日中活動系サービス +2,556施設 +3.3% 児童系サービスの継続的成長
訪問系サービス +1,497施設 +2.8% 安定した成長を維持
居住・入所系サービス +661施設 +3.7% 共同生活援助の成長が牽引
相談・支援系サービス +2,045施設 +4.9% 計画相談と障害児相談の高成長

相談・支援系サービスが最も高い成長率を示している一方、訪問系サービスは市場平均より低い成長となっています。通所・日中活動系サービスは市場全体と同程度の成長率を維持し、居住・入所系サービスは共同生活援助を中心に予想以上の成長を示しています。これらの傾向は、サービス間の連携と利用者の自立を支援するコーディネーション機能の重要性が高まっていることを示しています。

法人形態別の市場構成

法人形態別施設数

2025年3月時点の運営法人タイプ

  1. 株式会社: 72,747施設(36.8%)

    • 平均定員: 4.7名(小規模施設中心)
    • 前回比: +3,362施設(+4.8%成長)
    • 主な提供サービス: 訪問系、児童系サービス
  2. 社会福祉法人: 53,503施設(27.1%)

    • 平均定員: 11.1名(中・大規模施設)
    • 前回比: +1,423施設(+2.7%成長)
    • 主な提供サービス: 生活介護、施設入所支援
  3. NPO法人: 20,415施設(10.3%)

    • 平均定員: 6.2名(中小規模)
    • 前回比: +2,036施設(+11.1%成長)
    • 主な提供サービス: 就労継続支援B型、地域活動支援
  4. その他: 51,043施設(25.8%)

    • 医療法人、合同会社、一般社団法人など
    • 平均定員: 5.3名
    • 前回比: +1,025施設(+2.0%成長)

株式会社の構成比は前回の35.1%から36.8%へと増加しており、市場におけるその存在感がさらに強まっています。注目すべきは、NPO法人の成長率が11.1%と非常に高い点で、社会的企業としての役割が拡大していることが伺えます。一方、「その他」の法人形態は前回より成長率が低下しているものの、依然として4分の1以上の市場シェアを維持しています。

法人形態別の長期トレンド

2021年11月から2025年3月までの法人形態別の変化

法人形態 2021年11月 2025年3月 増加数 増加率
株式会社 43,777施設 72,747施設 +28,970施設 +66.2%
社会福祉法人 49,551施設 53,503施設 +3,952施設 +8.0%
NPO法人 17,527施設 20,415施設 +2,888施設 +16.5%
その他 35,082施設 51,043施設 +15,961施設 +45.5%

長期的に見ると、株式会社の伸びが最も顕著で、3年4ヶ月の間に約66%という急激な成長を遂げています。これに対し、社会福祉法人は8.0%と比較的緩やかな成長にとどまっており、従来の公益性重視の事業体から、より機動的な営利企業への市場シフトが明確に表れています。また「その他」の法人形態も45.5%の高い成長率を示しており、合同会社や一般社団法人などの新たな法人形態の台頭が続いていることを示しています。

市場の発展段階と成熟度

市場成熟度の指標

以下の指標から、障害福祉サービス市場の成熟度を分析します:

  1. 成長率の変動:

    • 2022年~2023年前半: 緩やかな成長(2.4%~4.3%)
    • 2023年後半~2024年: 急速な成長(6.3%~8.6%)
    • 2025年: 成長率の鈍化(3.5%)

    成長率の変動は、市場が急成長フェーズから成熟フェーズへ移行していることを示唆しています。

  2. サービス普及率:

    • 人口10万人あたり障害福祉サービス事業所数: 157.7事業所(2025年3月時点)
    • 2021年11月時点: 116.3事業所

    人口あたりの事業所数は35.6%増加しており、サービスの普及が急速に進んでいます。

  3. 競争環境の変化:

    • 放課後等デイサービスや就労継続支援B型など成熟したサービスでは成長率が低下
    • 自立生活援助や就労定着支援など新興サービスでは高い成長率を維持

    サービス種別によって成熟度に差があり、市場全体としては「部分的成熟段階」と評価できます。

市場発展の地域差

地域によって市場の成熟度に顕著な差が見られます:

  • 大都市圏(東京・大阪・名古屋): 成熟段階(低成長率、高競争環境、専門特化型の増加)
  • 地方中核市: 成長段階(中程度の成長率、バランスのとれた競争環境)
  • 地方小都市・郡部: 発展段階(高成長率、供給不足地域あり、基本サービス中心)

地域間の発展格差は縮小傾向にあるものの、依然として大都市圏と地方では市場環境が異なります。

長期トレンドからみる今後の見通し

2021年11月から2025年3月までの長期データから、以下のトレンドが明確になっています:

  1. 周期的な成長パターン:
    厚生労働省の報酬改定を境に成長率が変動する傾向があり、改定前に成長が加速し、改定後に安定する周期が見られます。

  2. サービスの多様化・専門化:
    基本的なサービス(居宅介護、生活介護等)の成長率が低下する一方、専門的なサービス(自立生活援助、就労定着支援等)が急成長しています。

  3. 法人形態の多様化:
    従来の社会福祉法人中心から、株式会社、NPO法人、合同会社、一般社団法人など多様な経営主体によるサービス提供が進んでいます。

  4. 小規模・専門特化型の増加:
    一事業所あたりの平均定員数の減少からも分かるように、小規模で専門性の高いサービス提供が増えています。

  5. 相談機能・連携機能の重視:
    相談系サービスの高い成長率は、サービス間の連携や包括的な支援の重要性が増していることを示しています。

今後5年間の予測

現在の長期トレンドをもとに、今後5年間(2025年~2030年)の展望を予測します:

  1. 成長率: 年平均3~4%程度の安定成長が継続すると予想されます。急速な拡大期は終わり、成熟した市場としての安定期に入ると考えられます。

  2. サービス構成: 自立支援・地域生活支援・就労支援に関するサービスの比重が高まり、入所系サービスの相対的比率は低下すると予想されます。

  3. 事業者構造: 多店舗展開の大規模事業者と専門特化型の小規模事業者への二極化が進み、中規模・総合型事業所は淘汰または専門化の圧力を受けると考えられます。

  4. 地域格差: 都市部での競争激化と地方での基盤整備が進み、地域間格差は縮小する方向に進むでしょう。

  5. サービス質: 量的拡大から質的向上へと政策的な重点がシフトし、サービス評価や第三者評価の重要性が増すと予想されます。

総括と考察

2025年3月時点の障害福祉サービス市場は、成長率の鈍化と質的な変化を示しています。総施設数は19.8万施設に達し、2021年11月から約35%増加という成長を示していますが、最近の成長率は3.5%と落ち着いてきています。

市場の成熟化に伴い、単純な量的拡大よりも、サービスの質や専門性、効果的な連携が重視される段階に入りつつあります。特に、相談機能や自立支援機能の高まりは、単体サービスの提供ではなく、包括的な支援体制の構築が求められていることを示しています。

法人形態の多様化は、様々な視点やアプローチによるサービス提供の可能性を広げる一方で、サービスの質の確保や安定的な運営の継続性という課題も提起しています。

今後の報酬改定では、量的拡大よりも質の向上や効率的な運営を促す方向性が強まると予想され、事業者には専門性の強化や連携体制の構築、ICT活用などによる運営効率化がより一層求められるでしょう。


本分析は2025年3月時点のWAMデータに基づき、2024年9月との比較により障害福祉サービス市場全体の動向を分析したものです。全ての数値は公開データを基に算出しており、一部推計を含みます。長期トレンド分析は2021年11月からのデータを使用しています。本記事が事業者の皆様の事業戦略立案や市場理解に寄与することを願っています。

2025年03月の記事

障害福祉サービス市場概況分析(2025年3月版)

障害福祉サービス市場は成長率が3.5%と鈍化し、成熟化に向かう傾向。総施設数は19.8万施設で2021年11月から約35%増加したが、量的拡大から質的向上へシフト。相談系サービスや自立支援機能の高まりが顕著で、包括的な支援体制の構築が求められる。法人形態の多様化が進み、今後は専門性強化や連携体制構築、ICT活用による効率化が重要に。

地域別市場分析(2025年3月版)

障害福祉サービス市場における地域間格差は是正傾向にあり、大都市圏と地方圏の成長率格差は0.6%ポイント差まで縮小。人口10万人あたりの施設数は依然として地方が多い(177.5施設 vs 127.9施設)。政令市では専門特化と効率化、中核市ではバランス型発展と高い成長性、小都市・郡部では複合型・連携型サービスが進み、地域特性に応じた発展が今後も進む見通し。

サービス動向分析(2025年3月版)

障害福祉サービス市場は安定成長を続けつつも、サービス種別によって成長段階に明確な差異。自立生活援助(+6.4%)や就労定着支援(+2.6%)が高成長を維持する一方、放課後等デイサービスや就労継続支援B型は成熟化が進行。特徴として①サービスの専門化・多様化、②相談支援機能の重要性増大、③地域生活・就労支援へのシフト、④質的向上と効率化の両立が顕著。

事業モデル分析(2025年3月版)

障害福祉サービス市場では、株式会社や「その他」法人形態の存在感が高まる一方、社会福祉法人は安定基盤を維持。規模別では、大規模事業者(効率性・総合力)と小規模事業者(専門性・地域密着性)の二極化が進む中、中規模事業者はバランス型展開で存在感を示す。人材戦略、デジタル技術活用、地域特性理解などの多角的アプローチで持続可能な事業運営を実現する動きが広がっている。

定員・利用率分析(2025年3月版)

障害福祉サービス市場では、効率性を重視した大規模施設と専門性を特化した小規模施設への二極化が進行し、中規模施設の比率が低下。都市部と地方で定員規模に明確な差異があり、地域特性に応じた柔軟な定員設計が重要に。全体的な利用率は緩やかに低下傾向にあり、特に児童系サービスでその傾向が顕著。今後は「規模の適正化」と「専門性による差別化」のバランスが重要。

成長機会分析(2025年3月版)

2025年3月のWAMデータ分析から、障害福祉サービス市場における未充足ニーズと新規参入機会を特定。首都圏周辺県では施設数が全国平均を大きく下回り、特に神奈川・埼玉・千葉では供給不足が継続。サービス種別では自立生活援助や就労定着支援で地域間格差が大きく、地方都市での参入余地が明確に。