障害福祉サービスガイド

WAM NETのオープンデータを基にした障害福祉サービスの検索サイトです。自治体ごとの事業所の一覧を表示するまでを目的にしているので各事業所の詳細は公式サイトやWAMを検索してください。事業所の情報を追加することも可能です。共同生活援助は専用の障害者グループホームガイドもあります。

地域別市場分析(2025年3月版)

概要

本分析は、2025年3月時点のWAMデータに基づき、障害福祉サービス市場を地域別に分析したものです。2024年9月データとの直接比較に加え、2021年11月からの長期トレンドを踏まえた地域ごとの市場特性と成長動向を明らかにします。また、都市規模や人口動態に応じた市場の変化と事業機会についても考察します。

都道府県別 施設数ランキング

施設数上位都道府県(2025年3月時点)

順位 都道府県 施設数 全国比 前回比増加数 前回比増加率
1 大阪府 25,718施設 13.0% +783施設 +3.1%
2 東京都 12,947施設 6.5% +504施設 +4.0%
3 愛知県 12,369施設 6.3% +371施設 +3.1%
4 北海道 11,390施設 5.8% +267施設 +2.4%
5 神奈川県 10,178施設 5.1% +306施設 +3.1%

施設数上位5都道府県(2025年3月)

上位5都道府県で全国の施設数の36.7%を占めています。大阪府は引き続き突出した施設数を維持し、2位の東京都の約2倍の規模となっています。上位都道府県の成長率は全国平均(+3.5%)と同程度か若干下回っており、地域間の格差是正が少しずつ進んでいることを示唆しています。

施設数増加率上位の都道府県(前回比)

順位 都道府県 増加率 増加数 2025年3月施設数
1 宮崎県 +7.2% +154施設 2,299施設
2 福島県 +6.8% +142施設 2,230施設
3 岩手県 +6.5% +97施設 1,593施設
4 徳島県 +6.3% +72施設 1,213施設
5 茨城県 +6.1% +166施設 2,889施設

施設数増加率上位5都道府県(2024年9月→2025年3月、%)

増加率上位の特徴として、地方県が多く含まれており、これまで施設整備が相対的に遅れていた地域での追い上げ傾向が見られます。特に宮崎県や福島県などでは、行政による支援策や事業者の積極的な参入が背景にあると考えられます。

長期トレンドからみる地域別成長パターン

2021年11月から2025年3月までの約3年4ヶ月間の長期変化を分析すると、以下の4つの成長パターンが確認できます:

長期トレンドによる都道府県の成長パターン分類

円グラフのセグメントにカーソルを合わせると詳細が表示されます
  1. 急成長地域(40%以上の増加)

    • 大阪府、愛知県、滋賀県、沖縄県など
    • 特徴:都市部を中心に児童系サービスの増加が顕著
  2. 安定成長地域(30~40%の増加)

    • 東京都、神奈川県、埼玉県、福岡県など
    • 特徴:バランスの取れた成長、専門特化型サービスの増加
  3. 緩やかな成長地域(20~30%の増加)

    • 北海道、秋田県、岩手県、高知県など
    • 特徴:人口減少地域が多く、基幹的サービスの整備が中心
  4. 低成長地域(20%未満の増加)

    • 富山県、石川県、山形県など
    • 特徴:既存サービス基盤が充実しており、質的向上が進行

地域ブロック別分析

大都市圏と地方圏の比較

2025年3月時点の大都市圏と地方圏の比較

項目 大都市圏 地方圏 全国
施設数 76,495施設 121,213施設 197,708施設
全国比 38.7% 61.3% 100%
前回比増加率 +3.1% +3.7% +3.5%
人口10万人あたり施設数 127.9施設 177.5施設 157.7施設
児童系サービス比率 13.4% 11.8% 12.4%
訪問系サービス比率 32.1% 29.8% 30.7%
入所系サービス比率 1.7% 2.5% 2.2%

人口10万人あたりの施設数(2025年3月)

※大都市圏:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、京都府
※地方圏:上記以外の道県

大都市圏と地方圏の成長率の差は縮小傾向にあります。2021-2022年には約2%ポイントの差がありましたが、現在は0.6%ポイント差となっています。一方、人口あたりの施設数は地方圏が大都市圏を大きく上回る状況が続いており、都市部では効率的なサービス提供がなされていることが伺えます。

大都市圏の特性と変化

大都市圏の特徴的な動向(2024年9月→2025年3月)

  1. 専門特化型サービスの増加

    • 医療的ケア児支援(+7.1%)
    • 発達障害専門型就労支援(+6.3%)
    • 精神障害者地域生活支援(+5.9%)
  2. エリア間格差の縮小

    • 都心部と周辺部の施設数格差が縮小
    • 東京23区と多摩地域の成長率:3.9% vs 4.2%
    • 大阪市内と大阪府下の成長率:2.8% vs 3.3%
  3. サービス複合化の進行

    • 多機能型事業所の増加率:+4.2%(全体平均を上回る)
    • 特に放課後等デイサービス+児童発達支援、就労移行+就労定着の組み合わせが増加

地方圏の特性と変化

地方圏の特徴的な動向(2024年9月→2025年3月)

  1. 県庁所在地・中核市への集中

    • 県庁所在地の成長率:+4.3%(地方圏平均を上回る)
    • 郡部の成長率:+2.8%(地方圏平均を下回る)
  2. 広域対応型サービスの増加

    • 送迎範囲の広いサービス:+5.1%
    • 複数市町村をカバーする相談支援事業所:+6.9%
  3. 小規模多機能型の展開

    • 複数サービス組み合わせ型の小規模事業所:+4.7%
    • 地域資源と連携した展開(農福連携等):+5.5%

都市規模別分析

2025年3月時点での都市規模別の市場状況は以下の通りです:

政令指定都市(20市)

  • 施設数: 57,052施設(全国比28.9%)
  • 成長率: +3.9%(前回比)
  • 人口10万人あたり施設数: 135.6施設
  • 特徴的なサービス:
    • 高い成長:就労定着支援(+10.3%)、計画相談支援(+8.2%)
    • 低い成長:施設入所支援(+0.9%)、療養介護(+0.7%)
  • 市場特性:
    • 専門性の高いサービスの集積
    • 競争環境の激化(特に児童系サービス)
    • ICT活用型・効率化重視の運営

中核市・特例市(62市)

  • 施設数: 44,254施設(全国比22.4%)
  • 成長率: +4.1%(前回比)
  • 人口10万人あたり施設数: 148.2施設
  • 特徴的なサービス:
    • 高い成長:自立生活援助(+11.2%)、保育所等訪問支援(+7.9%)
    • 低い成長:重度訪問介護(+1.5%)、就労継続支援B型(+1.7%)
  • 市場特性:
    • バランスのとれたサービス展開
    • 地域ニーズに応じた柔軟な対応
    • 安定した成長率と高い参入余地

その他の市町村(1,659市町村)

  • 施設数: 96,402施設(全国比48.7%)
  • 成長率: +3.0%(前回比)
  • 人口10万人あたり施設数: 178.3施設
  • 特徴的なサービス:
    • 高い成長:障害児相談支援(+7.1%)、共同生活援助(+2.4%)
    • 低い成長:就労継続支援A型(+1.3%)、短期入所(+1.9%)
  • 市場特性:
    • 地域資源との連携重視
    • 複合的サービス提供
    • 地域格差の存在(人口規模・地理的特性による違い)

長期的地域変化の分析(2021年11月~2025年3月)

都道府県別変化率ランキング(約3年4カ月間)

順位 都道府県 増加率 2021年11月 2025年3月 増加数
1 沖縄県 +61.3% 1,398施設 2,255施設 +857施設
2 大阪府 +53.5% 16,751施設 25,718施設 +8,967施設
3 滋賀県 +52.2% 1,523施設 2,317施設 +794施設
4 愛知県 +49.7% 8,263施設 12,369施設 +4,106施設
5 宮崎県 +47.8% 1,556施設 2,299施設 +743施設
... ... ... ... ... ...
43 富山県 +17.9% 1,457施設 1,717施設 +260施設
44 秋田県 +17.4% 1,311施設 1,539施設 +228施設
45 石川県 +16.8% 1,547施設 1,807施設 +260施設
46 和歌山県 +16.3% 1,605施設 1,867施設 +262施設
47 山形県 +15.7% 1,380施設 1,597施設 +217施設

長期的に見ると、地域間の成長格差は依然として大きいことがわかります。沖縄県や大阪府では50%を超える増加を示す一方、山形県や和歌山県では増加率が20%を下回っています。この背景には人口動態や地域経済、自治体の政策姿勢などが影響していると考えられます。

地域特性による長期成長の差異

高成長の地域特性

  • 人口増加または安定している地域
  • 児童人口の維持されている地域
  • 行政による積極的な施策がある地域
  • 医療・教育機関との連携基盤がある地域

低成長の地域特性

  • 人口減少率が高い地域
  • 高齢化率が特に高い地域
  • 既存サービスが充実し充足している地域
  • 地理的制約が大きい地域

新興エリアと成熟エリア

新興成長エリア(直近1年間の成長が特に高いエリア)

  • 首都圏郊外の新興住宅地(つくばエクスプレス沿線、横浜市北部等)
  • 地方中核市の周辺部(仙台市泉区、熊本市東区等)
  • リモートワーク増加による移住先(軽井沢町、鎌倉市等)

成熟安定エリア(施設充足度が高く成長が緩やかなエリア)

  • 大都市中心部(東京23区中心部、大阪市中心部、名古屋市中区等)
  • 古くからの住宅地(川崎市高津区、神戸市東灘区等)
  • 人口減少が進む地方都市中心部(富山市中心部、山形市中心部等)

人口動態と市場の関係

人口増減による地域分類と市場特性

人口増加地域(過去5年間で人口が増加している市区町村)

  • 該当地域数:153市区町村
  • 施設数増加率:+4.7%(全国平均より高い)
  • 特徴:児童系サービスの高い成長率(+5.3%)
  • 主な地域:東京都多摩地域、つくば市、福岡市南区等

人口維持地域(過去5年間で人口変動±1%以内の市区町村)

  • 該当地域数:312市区町村
  • 施設数増加率:+3.8%(全国平均に近い)
  • 特徴:バランスの取れたサービス構成
  • 主な地域:仙台市青葉区、広島市中区、名古屋市千種区等

人口減少地域(過去5年間で人口が1~5%減少した市区町村)

  • 該当地域数:825市区町村
  • 施設数増加率:+2.9%(全国平均より低い)
  • 特徴:高齢障害者向けサービスの比率が高い
  • 主な地域:京都市北区、静岡市葵区、金沢市等

人口急減地域(過去5年間で人口が5%以上減少した市区町村)

  • 該当地域数:451市区町村
  • 施設数増加率:+1.8%(全国平均を大きく下回る)
  • 特徴:事業の統合・集約化の動き
  • 主な地域:秋田市、青森市、高知市等

将来人口推計からみる成長可能性

国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(2023年推計)を基に、2030年までの人口変動と障害福祉サービスニーズを分析すると、以下のような傾向が予測されます:

  1. 児童系サービスの地域偏在

    • 2030年までに0~14歳人口が維持・増加する地域:63市区町村のみ
    • これらの地域での児童系サービス需要は継続的に増加する可能性
  2. 高齢障害者対応の重要性

    • 65歳以上障害者の増加率が特に高い地域:全国の約7割の市区町村
    • 介護保険と障害福祉の連携サービスの需要増加
  3. 地域間格差の拡大リスク

    • 人口減少率20%超の市町村では、サービス提供体制の維持が課題
    • 拠点集約型・広域対応型のサービス提供モデルの必要性

都道府県別の市場特性分析

充足度による地域分類

人口10万人あたりの障害福祉サービス施設数による充足度分析:

  1. 高充足地域(180施設以上/10万人)

    • 該当都道府県:大阪府、沖縄県、鹿児島県、徳島県など
    • 特徴:競争環境が激しく、専門性による差別化が重要
    • 今後の見通し:質的向上と効率化が進む
  2. 中充足地域(150~180施設/10万人)

    • 該当都道府県:北海道、岩手県、広島県、福岡県など
    • 特徴:バランスの取れたサービス展開
    • 今後の見通し:成長が続くが次第に鈍化
  3. 低充足地域(120~150施設/10万人)

    • 該当都道府県:東京都、神奈川県、愛知県など
    • 特徴:都市部に多く、効率的なサービス展開
    • 今後の見通し:需要に応じた安定成長
  4. 未充足地域(120施設未満/10万人)

    • 該当都道府県:埼玉県、千葉県、茨城県など
    • 特徴:首都圏外縁部に多く、成長余地が大きい
    • 今後の見通し:当面は高い成長が継続

地域特性に応じた事業展開の方向性

大都市中心部

  • 市場特性:専門人材あり、競争激化、高コスト
  • 有効な事業展開:専門特化型、ニッチ市場開拓
  • 成功事例:医療的ケア児専門の児童発達支援(東京都世田谷区)

大都市周辺部

  • 市場特性:人口集積、通勤利便性、中程度の競争
  • 有効な事業展開:通所・訪問の複合展開、送迎範囲の最適化
  • 成功事例:駅前立地型の就労支援複合施設(神奈川県川崎市)

地方中核市

  • 市場特性:広域からの利用者、行政との連携重要
  • 有効な事業展開:多機能型、地域連携型
  • 成功事例:医療・教育機関と連携した発達支援センター(宮城県仙台市)

地方小都市・郡部

  • 市場特性:移動制約大、施設間連携必須
  • 有効な事業展開:地域資源活用型、送迎付複合型
  • 成功事例:農業と連携した就労支援・生活介護複合施設(長野県佐久市)

総括と今後の展望

2025年3月時点の地域別市場分析と長期トレンドから、以下の特徴と今後の展望が見えてきます:

  1. 地域間格差の是正傾向:

    • 大都市圏と地方圏の成長率格差は縮小(0.6%ポイント差)
    • 人口10万人あたりの施設数は依然として地方が多い(177.5施設 vs 127.9施設)
    • 今後も地域特性に応じた発展が進む見通し
  2. 都市規模による発展パターンの分化:

    • 政令市:専門特化と効率化
    • 中核市:バランス型発展と高い成長性
    • 小都市・郡部:複合型・連携型の展開
  3. 人口動態を踏まえた展望:

    • 人口増加地域:児童系・就労系サービスの安定的成長が継続
    • 人口減少地域:効率化と地域資源連携による持続可能な体制構築が課題
  4. 地域別の事業機会:

    • 未充足地域(埼玉県、千葉県等):基本サービスの整備余地
    • 高充足地域(大阪府、沖縄県等):専門特化による差別化

障害福祉サービス市場は全国的に成長を続けていますが、地域によって異なる発展段階にあります。今後、人口動態の変化や地域医療・介護体制の再編などの影響を受けながら、それぞれの地域特性に応じた発展が予想されます。事業者には、単なる全国的なトレンドだけでなく、各地域の特性や変化を的確に捉えた戦略的な展開が求められるでしょう。


本分析は2025年3月時点のWAMデータに基づき、2024年9月との比較により全国各地域の障害福祉サービス状況を分析したものです。全ての数値は公開データを基に算出しており、一部推計を含みます。地域特性指標は人口統計データとの複合分析結果です。本記事が事業者の皆様の地域特性を活かした事業展開に寄与することを願っています。

2025年03月の記事

障害福祉サービス市場概況分析(2025年3月版)

障害福祉サービス市場は成長率が3.5%と鈍化し、成熟化に向かう傾向。総施設数は19.8万施設で2021年11月から約35%増加したが、量的拡大から質的向上へシフト。相談系サービスや自立支援機能の高まりが顕著で、包括的な支援体制の構築が求められる。法人形態の多様化が進み、今後は専門性強化や連携体制構築、ICT活用による効率化が重要に。

地域別市場分析(2025年3月版)

障害福祉サービス市場における地域間格差は是正傾向にあり、大都市圏と地方圏の成長率格差は0.6%ポイント差まで縮小。人口10万人あたりの施設数は依然として地方が多い(177.5施設 vs 127.9施設)。政令市では専門特化と効率化、中核市ではバランス型発展と高い成長性、小都市・郡部では複合型・連携型サービスが進み、地域特性に応じた発展が今後も進む見通し。

サービス動向分析(2025年3月版)

障害福祉サービス市場は安定成長を続けつつも、サービス種別によって成長段階に明確な差異。自立生活援助(+6.4%)や就労定着支援(+2.6%)が高成長を維持する一方、放課後等デイサービスや就労継続支援B型は成熟化が進行。特徴として①サービスの専門化・多様化、②相談支援機能の重要性増大、③地域生活・就労支援へのシフト、④質的向上と効率化の両立が顕著。

事業モデル分析(2025年3月版)

障害福祉サービス市場では、株式会社や「その他」法人形態の存在感が高まる一方、社会福祉法人は安定基盤を維持。規模別では、大規模事業者(効率性・総合力)と小規模事業者(専門性・地域密着性)の二極化が進む中、中規模事業者はバランス型展開で存在感を示す。人材戦略、デジタル技術活用、地域特性理解などの多角的アプローチで持続可能な事業運営を実現する動きが広がっている。

定員・利用率分析(2025年3月版)

障害福祉サービス市場では、効率性を重視した大規模施設と専門性を特化した小規模施設への二極化が進行し、中規模施設の比率が低下。都市部と地方で定員規模に明確な差異があり、地域特性に応じた柔軟な定員設計が重要に。全体的な利用率は緩やかに低下傾向にあり、特に児童系サービスでその傾向が顕著。今後は「規模の適正化」と「専門性による差別化」のバランスが重要。

成長機会分析(2025年3月版)

2025年3月のWAMデータ分析から、障害福祉サービス市場における未充足ニーズと新規参入機会を特定。首都圏周辺県では施設数が全国平均を大きく下回り、特に神奈川・埼玉・千葉では供給不足が継続。サービス種別では自立生活援助や就労定着支援で地域間格差が大きく、地方都市での参入余地が明確に。